エネアは温泉だらけのダンジョン二層を慎重に進んでいた。足元から絶えず湧き出る温泉の湯気が視界を覆い、不意打ちを仕掛けてくる魔物に警戒を怠れない。しかし、彼女には「絶対防御」がある。そのおかげで、どんな魔物が襲いかかってきても、全くダメージを受けることはない。
「さっきの大きな湖も無事突破したし…この調子でいけるかな?」
エネアは足元に注意を払いながら、前方に広がる温泉の一角を見つめた。そこで見つけたのは、先ほどとは異なる新たな魔物たちだった。小さな温泉の周りを囲むように、カエルのような形をした魔物がぴょんぴょんと跳ねている。それらの体はぬめりとした緑色で、目が大きく赤く輝いていた。
「今度はカエル系の魔物か…でも、油断しちゃダメだね」
エネアは短剣を構え、魔物に向かって静かに近づいた。その瞬間、カエルの魔物の一匹が突然跳躍し、空中からエネアに向かって突進してきた。だが、エネアは全く慌てず、その攻撃をじっと見つめていた。
「また、これね」
カエルの魔物が彼女にぶつかる瞬間、エネアの「絶対防御」が発動し、魔物の全力の攻撃はまるで何もないかのように彼女の周囲で弾かれた。魔物は驚いたように跳ね返り、バランスを崩して地面に転がった。
「今だ!」
エネアは素早く距離を詰め、短剣を一閃。カエルの魔物は抵抗する間もなく、その場で倒れた。
「ふぅ、これで一匹目…」
だが、その直後、残りのカエルたちが一斉にエネアに向かって突進してきた。十匹以上の魔物が次々と跳びかかってくる様子は、まるで暴風のようだ。しかし、エネアはその群れに全く動じなかった。
「そんなにたくさん来ても、無駄なんだけどな…」
彼女は軽く肩をすくめ、襲いかかってくるカエルの魔物たちを次々と受け流しながら、短剣で素早く応戦した。跳びかかるたびに、魔物たちは弾かれ、そしてエネアの刃が正確にその急所を突く。まるで踊るかのような動きで、彼女は全ての魔物を片付けていった。
しばらくして、エネアは次の温泉に差し掛かった。今度は、温泉の中から巨大な蛇のような魔物が姿を現した。全身が黒光りし、長い体が水面を這うように動いている。蛇の目は冷たく光り、その舌がチラチラと動いていた。
「蛇型か…今度はどんな攻撃をしてくるかな?」
エネアが警戒しながら一歩前に進むと、蛇の魔物は素早く反応し、その巨大な体を巻きつけるようにエネアに向かって突進してきた。鋭い牙を剥き出しにして、今にも彼女を丸呑みにしそうな勢いだ。
「さすがにこの大きさは圧巻だね。でも…」
蛇の魔物がエネアを捕らえようとする瞬間、その体がエネアに触れると同時に弾かれた。「絶対防御」によって、攻撃は全く通用しなかった。魔物は驚いたように体を引き、次の攻撃に備えようとしている。
「その隙が命取りだよ!」
エネアは一瞬の隙を見逃さず、蛇の体の弱点を見定めると、短剣を素早く振り抜いた。鋭い刃が魔物の鱗を切り裂き、蛇は呻き声を上げながら温泉の中に崩れ落ちた。水面に波紋が広がり、静かに沈んでいく魔物の姿を確認しながら、エネアは短剣を納めた。
「これで二匹目…意外とこの層、魔物が多いな」
エネアは少し疲れた様子でため息をついたが、それでも前に進む意志は変わらない。まだまだこの層には未知の魔物が潜んでいるはずだ。彼女は決意を新たにし、さらに奥へと進んでいった。
その後もエネアは温泉の間を縫うように進み、時折現れる魔物たちと戦い続けた。カエル、蛇、そして魚のような魔物など、さまざまな敵が彼女に襲いかかってきたが、その全てを圧倒的な力で退けていく。
「ふぅ…これでこのエリアもほとんどクリアかな?」
彼女はようやく魔物の数が減り、静かな温泉の空間に立ち止まった。温泉の湯気が心地よく、次の戦いに備えるために少し休息を取ることに決めた。
「さて、次はどんな魔物が待ってるのかな?でも、大丈夫…絶対負けないから!」
エネアは心の中で自信を持ちながら、次の温泉に向かって再び歩みを進めた。
「…あの人チームを作らず、ボスに挑む気…?
魅了対策持ってるのかな?」
「まあ、何かあるんだろ。それ以外なら、実力があるだけの初心者だ。それにボス部屋前の毒魔物は防御スキルを貫通してくるが、大丈夫だろうか…」
「…助けるくらいなら怖がられないよね…?」
エネアを一層からずっと見ていた者達は、エネアとすれ違うフリをしながらも、毒耐性を魔法で高めてあげた。
「!魔物と人が混ざった気配…?それに…」
『※*※**から毒耐性を付与されました。』
エネアは動揺しながら振り向く。
「さっきの人…?」
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