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もう走ることのできない少女は、力なく、それでも止まらずに歩いていく。
降り注ぐ雨が体の熱を奪って、少女の体は凍てついる。
泣き叫んだ体からはもう声は出ず、白い息だけが細かく吐き出される。
ようやく求めていた場所にたどり着き、ゆっくりとドアノブに手をかける。
質素な部屋の中には、男が1人。
特に驚きもせず、ただ少女の方を見つめている。
少女は口を動かすが、声は出ない。
男はそれを察したように、少女を部屋の中に招き入れた。
……それから、少女は深い深い眠りについた。
安らかな寝顔で、静かに。
外の雨はいっそう強くなっている。
男は、知っている。
少女が眠りにつくことで、誰かが悲しむことを。
それでも彼は、やめることはない。