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kaede🍁
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篝火

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NIKITA
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第4話、読み終わりました…💜 深澤くんが一人で照くんを探す場面、すごく切なかったです。周りのカップルを見て「いいな」って思う気持ちとか、急に会いたくなる感じ、すごく伝わってきました。でも最後に照くんが後ろからぎゅっとしてくれて、ずっと一緒にいようって言葉をかけてくれたところ、本当に胸が熱くなりました…🥺 魔法が解けなかったのも気になるけど、とりあえず二人が見つかってよかったです!次の話も楽しみにしてます🤍
阿部たちと別れたあと。
深澤は一人、城の中を歩いていた。
「照、どこにいるんだろ。」
王子様が誰なのか。
考える必要もなかった。
もし、この夢が自分たちの知っている関係をそのまま当てはめているのなら。
自分の王子様は、きっと岩本だ。
だから最初は楽しかった。
豪華な城の中を歩きながら。
扉を開けるたびに、
(ここかな。)
廊下の向こうに背の高い人を見つけるたびに、
(照?)
そんなことを考えていた。
けれど。
どれだけ歩いても見つからない。
城が広すぎる。
しかも、慣れないドレスにガラスの靴。
一体どれだけ歩いたのかも分からなくなってきた。
深澤は階段の途中で足を止めた。
下を見る。
一階の大きなホールでは、まだ舞踏会が続いていた。
「……。」
これ以上探し回ったら。
岩本を見つけた頃には、踊る体力なんて残っていない気がする。
深澤は二階の手すりに手を置いた。
そこから舞踏会を眺める。
大きなシャンデリア。
華やかな衣装。
楽しそうな笑い声。
音楽に合わせて、たくさんの人が踊っている。
若い男女。
お互いの顔を見つめながら、少し照れくさそうに踊っている。
その隣には、年老いた夫婦。
何十年も一緒にいるのだろうか。
ゆっくりとした動きで、穏やかに笑い合っていた。
少し離れたところでは。
まだ小さな子どもが、大人の足の上に自分の足を乗せて踊っている。
上手ではない。
それでも楽しそうだった。
「……いいな。」
深澤は小さく呟いた。
さっきまで。
この夢を面白がっていた。
三人揃ってシンデレラの格好をして。
佐久間と康二がネズミになって。
ラウールが魔法使いで。
ワゴン車で城まで来て。
全部おかしくて。
ずっと笑っていた。
なのに。
今は少しだけ寂しかった。
目の前では。
みんな、大切な人と踊っている。
深澤は無意識に人混みの中から岩本を探した。
いない。
「……照。」
名前を呼んでみる。
当然、返事はない。
急に。
声が聞きたくなった。
低くて。
少しぶっきらぼうに聞こえるのに。
自分へ向けられる声は、どこか優しい。
笑った顔も見たかった。
大きな口を開けて笑う顔。
呆れた時の顔。
自分を見る時の、穏やかな目。
全部。
急に恋しくなった。
長く一緒にいる。
あまりにも長く一緒にいすぎて。
気がついたら、一緒にいることが当たり前になっていた。
恋人というより。
メンバーで。
家族みたいで。
隣にいるのが普通の人。
だから。
こんなに会いたくなるなんて思わなかった。
たった少し見つからないだけなのに。
「……何やってんだろ、俺。」
自分で自分がおかしくて、小さく笑う。
でも。
笑ったら余計に寂しくなった。
目の前では、老夫婦が楽しそうに踊っている。
長い時間を一緒に過ごして。
それでも手を取り合っている。
深澤はその姿をぼんやり眺めた。
自分も。
照と、あんなふうになれるのだろうか。
これから先。
何年経っても。
何十年経っても。
隣にいて。
くだらないことで笑って。
たまに喧嘩して。
それでも最後には同じ場所へ戻って。
ずっと一緒に。
「……会いたい。」
小さく呟く。
誰にも聞こえないと思った。
「声が聞きたい。」
胸が苦しくなる。
「笑ってる顔が見たい。」
どうしてこんなに。
ただ会えないだけで寂しいのだろう。
答えは。
本当はずっと知っていた。
深澤は俯いて、小さく笑った。
「俺……。」
そして。
誰に聞かせるわけでもなく呟く。
「照がいないと、だめなんだ。」
その瞬間。
「嬉しい。」
「……え?」
聞こえるはずのない声がした。
深澤が振り返ろうとした、その時。
背中から大きな腕が回ってきた。
「……!」
強く。
でも優しく。
後ろから抱きしめられる。
知っている腕だった。
何度も抱きしめられたことがある。
振り返らなくても分かる。
「照……?」
「うん。」
すぐ耳元で声がする。
ずっと聞きたかった声。
「やっと見つけた。」
深澤は目を見開いた。
「……いつからいたの?」
岩本は少し笑う。
「『会いたい』くらいから。」
「それ、結構聞いてんじゃん!」
恥ずかしさで一気に顔が熱くなる。
「だったらすぐ声掛けろよ!」
「ごめん。」
そう言いながらも、岩本は腕を緩めない。
むしろ、もう一度ぎゅっと抱きしめる。
「でも。」
「ふっかが弱音吐くこと、なかなかないから。」
「最後まで聞きたくなった。」
「最悪。」
「嬉しかった。」
「忘れて。」
「無理。」
即答だった。
深澤は顔を覆いたくなった。
「夢から覚めても忘れて。」
「絶対忘れない。」
「照。」
「多分一生覚えてる。」
「本当にやだ。」
そう言いながら。
深澤は岩本の腕を振りほどかなかった。
むしろ。
自分の腰に回された手へ、そっと自分の手を重ねた。
「……俺。」
「うん?」
「ずっと照探してた。」
「俺も。」
「城広すぎ。」
「うん。」
「もう足痛い。」
「うん。」
「疲れた。」
「でも、もう探さなくていいでしょ。」
岩本の言葉に、深澤は少しだけ顔を上げる。
「俺、ここにいるから。」
深澤は黙った。
その言葉が。
なぜか胸の奥へすとんと落ちた。
「……そっか。」
「うん。」
「もう探さなくていいんだ。」
「そう。」
岩本がようやく腕を緩める。
深澤は振り返った。
やっと。
会いたかった顔が見える。
王子様らしい華やかな衣装を着た岩本。
でも。
笑った顔は、いつもの岩本だった。
それだけで。
さっきまで感じていた寂しさが嘘のように消えていく。
深澤も自然と笑った。
「やっと見つけた。」
岩本は首を横に振る。
「俺が見つけたんだけど。」
「どっちでもいいじゃん。」
「じゃあ。」
岩本が深澤へ手を差し出す。
「踊る?」
深澤はその手を見る。
それから、一階の舞踏会を見る。
さっきまで羨ましいと思っていた景色。
今度は自分も。
大切な人と、そこへ行ける。
でも。
「……ちょっと休んでから。」
岩本が吹き出した。
「疲れたんでしょ?」
「めちゃくちゃ疲れた。」
「じゃあ休もう。」
岩本と深澤は近くのソファに座った。
肩が触れる。
深澤は自然と、その肩へ頭を預けた。
もう寂しくなかった。
踊るのは少し後でもいい。
今はただ。
会いたかった人の声を聞いて。
会いたかった笑顔を見て。
隣にいる温かさを感じていたかった。
深澤は目の前で踊る老夫婦をもう一度眺める。
そして今度は。
少しだけ幸せそうに笑った。
___________
少し休んだあと。
「そろそろ行く?」
岩本が立ち上がり、深澤へ手を差し出した。
「うん。」
深澤はその手を取る。
二人で階段を下り、舞踏会のホールへ向かった。
さっきまで二階から眺めていた場所。
たくさんの人が大切な相手と楽しそうに踊っていた場所へ、今度は岩本と一緒に足を踏み入れる。
「俺、こういうの踊れないよ。」
「俺も。」
「王子様なのに?」
「今日初めて王子様になったから。」
「そっか。」
二人で笑う。
それでも。
音楽に合わせて動き始めると、不思議なくらい自然に体が動いた。
「……踊れるじゃん。」
「夢だからじゃない?」
「便利だね、夢。」
岩本の手が深澤の腰へ添えられる。
深澤もその肩へ手を置く。
ゆっくりとステップを踏む。
岩本に導かれながら回ると、紫色のドレスがふわりと広がった。
「ふっか。」
「何?」
「似合ってる。」
「ドレス?」
「うん。」
「それ褒めてる?」
「めちゃくちゃ褒めてる。」
深澤は照れくさくなって笑った。
「照も王子様似合ってるよ。」
「本当?」
「うん。」
「筋肉すごい王子様だけど。」
「そこは関係ないでしょ。」
また二人で笑う。
さっきまで。
一人でこの景色を眺めているのが、あんなに寂しかったのに。
今は楽しくて仕方がない。
同じ音楽。
同じ場所。
ただ隣に岩本がいるだけで、こんなにも違って見えた。
___________
踊り疲れたあとは、二人で料理が並ぶテーブルへ向かった。
「これ美味しそう。」
「食べれば?」
「照も食べる?」
「食べる。」
見たことのない料理。
綺麗に盛り付けられたデザート。
小さなケーキ。
果物。
「これ美味しい。」
「本当?」
「食べてみ。」
岩本が差し出したものを深澤が食べる。
「本当だ。」
「でしょ?」
特別なことなんて何もしていない。
一緒に踊って。
一緒に食べて。
くだらない話をして。
笑う。
いつもと変わらない。
でも。
この世界でずっと岩本を探していたからなのか。
その普通の時間が、今日は妙に幸せだった。
___________
しばらくして。
二人はシャンパングラスを手に、ホールの端で休んでいた。
「結構楽しいね。」
深澤が言う。
「うん。」
「最初どうなるかと思ったけど。」
「何が?」
「全部。」
深澤は笑う。
「起きたらボロボロの服着てるし。」
「シンデレラ三人いるし。」
「佐久間と康二はネズミだし。」
「ラウール魔法使いだし。」
岩本が吹き出す。
「何それ。」
「照、知らないんだ。」
「知らない。」
「あとで全部話す。」
「聞きたい。」
その時。
「あら。」
背後から声を掛けられた。
深澤が振り返る。
「あ。」
さっき。
二階から見ていた老夫婦だった。
二人は今も仲良く腕を組んでいる。
「こんばんは。」
深澤が頭を下げる。
奥さんは深澤の顔をじっと見たあと、優しく笑った。
「よかった。」
「え?」
「さっきより、ずっといい顔になったわね。」
深澤は目を瞬かせる。
「さっき……?」
「二階にいたでしょう?」
奥さんが上を指差す。
「あそこから、ずっとこちらを見ていたから。」
「……見られてたんだ。」
少し恥ずかしくなる。
「とても寂しそうな顔をしていたから、気になっていたの。」
奥さんは隣にいる岩本を見る。
そして、もう一度深澤を見る。
「会えてよかったわね。」
その言葉に。
深澤は一瞬、何も答えられなかった。
隣を見る。
岩本がいる。
目が合うと、穏やかに笑ってくれた。
深澤も笑った。
「はい。」
今度は迷わなかった。
「会えてよかったです。」
奥さんも嬉しそうに笑う。
隣にいた旦那さんが、岩本へ小さく声を掛ける。
「大切にしなさい。」
岩本は少し驚いたあと。
「はい。」
真面目に頷いた。
「もちろんです。」
「ちょっと。」
深澤は恥ずかしくなる。
老夫婦は楽しそうに笑いながら、また二人で歩いていった。
その背中を見送りながら。
深澤は小さく呟く。
「なんかいいね。」
「何が?」
「あの二人。」
「うん。」
「ずっと一緒なんだろうね。」
岩本は少しだけ考えて。
深澤の手を握った。
「俺らもそうなるんじゃない?」
「……。」
深澤は握られた手を見る。
「そうかな。」
「俺はそのつもりだけど。」
「……そっか。」
深澤は小さく笑う。
そして、握られた手を握り返した。
「じゃあ。」
「俺もそのつもりでいる。」
岩本が嬉しそうに笑った。
___________
その時。
ゴーン。
突然、大きな鐘の音が城中に響いた。
「……え?」
深澤が固まる。
もう一度。
ゴーン。
「待って!」
時計を見る。
十二時。
「照!」
「何?」
「十二時!」
「うん。」
「魔法!」
深澤は慌てて自分のドレスを見る。
「やばい!」
ラウールの言葉を思い出す。
十二時になったら魔法が解ける。
ドレスも。
ガラスの靴も。
全部元に戻る。
それに。
ワゴン車まで消える。
「帰らないと!」
深澤は慌てる。
しかし。
「……あれ?」
何も起こらない。
深澤は自分のドレスを見る。
紫色のまま。
ガラスの靴を見る。
それも消えていない。
「……照。」
「うん。」
「解けない。」
岩本も不思議そうに深澤を見る。
「本当だね。」
最後の音が響き渡る。
それでも。
深澤の姿は何一つ変わらなかった。
「なんで?」
周囲では舞踏会が終わり、招待客たちが少しずつ帰り始めている。
深澤は嫌な予感がして岩本を見る。
「……ラウ。」
「絶対あいつなんか知ってる。」
そして、もう一つ気付く。
「あ。」
「何?」
「あべちゃんと翔太。」
二人にも同じ魔法がかかっている。
どうなっているのか分からない。
ちゃんと王子様には会えたのか。
「探しに行こう。」
深澤が言う。
岩本は頷いた。
「行こう。」
深澤は岩本の手を握ったまま、帰り始める人たちとは逆方向へ歩き出す。
魔法が解けなかった理由は分からない。
でも。
隣には岩本がいる。
だからもう。
さっきみたいな不安はなかった。
「照。」
「ん?」
「手、離さないでね。」
岩本は少し笑う。
「離さないよ。」
二人はそのまま。
他のメンバーを探すため、城のロビーへ向かった。