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フィアは自分の両手を握るようにミノリに伝えた。それから、ミノリはフィアに言われた通りにフィアの両手を握ると、クロノスに繋がるのを待った。
そして、ついに、その時はやってきた……。
『……どうしたんだ? 何か用か?』
「は、はい! クロノス様とお話がしたいと申す者がおりましてですね。その、なんとご報告したらよいのか分かりませんが、えーっと、つまりですね……」
『連絡してきた理由は大体、分かった。要するに、私に意見する者がそちらにいるのだな?』
「は、はい! その通りでございます!」
『よかろう。その者に繋げ』
「はい!」
「……あー、あー、聞こえてる? クズノオス様」
『……クロノスだ』
「あー、そうそう、そんな名前だったわね。あたし、記憶力が無いから、人とか神様の名前なんか三秒で忘れちゃうのよ。あははははは」
『……用件を聞こうか』
「あら、いきなり本題に入るタイプなの? そんなんじゃ、モテないわよ?」
『いいから、話せ』
「はいはい、分かったから、焦らないでよ。もう、せっかちさんなんだから……。えーっと、あたし、あんたに言いたいことが一つあるんだけど、言ってもいいかしら?」
『……許可しよう』
「ありがとう、クロノス様。えーっと、一つだけ忠告しておくけど、あんたが派遣した殺し屋はナオトのことが好きになっちゃったみたいだから、ナオトを殺すことはできないそうよ」
『……なに? それは本当か?』
「ええ、本当よ。もう幸せな未来しか見えてこないって言ってたわ」
『……そうか』
「あっ、あと、ナオトを傷つけようとしたら、雇い主である、あんたであってもなんの躊躇《ためら》いもなく殺せるらしいから、間違っても寝込みとかを狙わないでね?」
『……理解した。しかし、わざわざそんなことを伝えるために我を呼ぶとは、貴様なかなか肝が座っているではないか』
「バーカ。あたしはただ自分が言いたいことを言っただけよ」
『ふん、ならば、好きにしろと伝えろ。そうすれば、その殺し屋は生かしておいてやる』
「わー、ありがとう! クロノス様! しっかり伝えておくわね!」
『うむ、よろしく頼むぞ。おっと、そろそろ定例会議の時間だな。では、また会おう』
「うん、バイバーイ!」
……その場にいる全員が驚愕《きょうがく》した。時の神クロノスを相手にやや挑発的な会話をしていたからだ。(聖○士星矢|Ω《オメガ》のパ○サイト編のラスボス……ではない)
「ミ、ミノリ。今の大丈夫なのか?」
俺がそう訊《き》くとミノリ(吸血鬼)はこちらにヒョコヒョコと歩いてきて、こう言った。
「全然、大丈夫よ! あんな名ばかりの神様なんか、あたしのコミ|力《りょく》があれば、ざっとこんなもんよ!」
「雑○昆奈門?」
「それは『に○たま』のキャラでしょ?」
「おっと、俺としたことが、つい反応してしまった」
「ふふん! やっぱりあんたはあたしがいないとダメね!」
「そうだな。ミノリがいなかったら、フィアとの関係が終わるところだったよ。ありがとな、ミノリ」
「じゃあ、頭撫でて!」
「ん? ああ、いいぞ。お安い御用だ」
俺がミノリの頭を優しく撫でてやると。
「んふふー♪」
そう言いながら、満足そうな顔をしていた。
「あ、あの……私はこれからどうすれば……」
俺はフィアを見ながら。(まだミノリの頭を撫でている)
「そんなのお前が決めることだろう? ここに残るのも出て行くのも、お前次第だ」
「……では、これからもよろしくお願いしま……」
フィアが頭を下げる前に俺はこう言った。
「頭を下げる必要なんてないぞ。俺はずっと守護天使であるお前に守られてきたんだから」
「……そう、ですか。では、これからも私を頼ってくださいね?」
「ああ、もちろんそのつもりだ。みんなもそれでいいか?」
『もちのろん!』
フィアと俺以外の全員がいい返事をしてくれたおかげでこの騒動は無事に解決された……。
「それじゃあ『蒲公英《たんぽぽ》色に染まりし花畑』に向けて、出発進行!!」
『了解!!』
こうして、俺たちは『蒲公英《たんぽぽ》色に染まりし花畑』に向けて出発したのであった。
巨大な亀型モンスターの甲羅の中心と合体しているアパートの二階にある部屋に十一人のモンストチルドレンとその他の存在たちと住んでいるナオトたちの旅は続く……。
※その亀の周囲には不可視の結界が常時展開されているため、見つけるのは困難である。
*
その頃『蒲公英《たんぽぽ》色に染まりし花畑』では。(この世界は日本と酷似している。その花畑は四国のどこかである)
「ふむ、誕生石使いが二人も、こちらに向かってきているな」
「ふ、二人も!?」
「やべえぞ、やべえぞ。ついに俺たちの時代が再来だよお!」
最初に発言したのが『ハトパーズ』。ハト型の誕生石。一言で言うなら、金色のハト。
次に発言したのが『ウシトリン』。牛型の誕生石である。一言で言うなら、金色の牛。
最後に発言したのが『ゴールデンサファイアント』という金色のアリ。
十一月の誕生日たちがこんなところに生息していることは、今のところ誰も知らない。
「安心しろ。この広い花畑から我々を見つけ出すのは不可能だからな」
「そ、そうだよね。見つからないよね!」
「大丈夫だよお! というか、俺が一番見つからないよお!」
『たしかに』
「おいおい、ハモってんじゃねえよお!」
「お前のそのしゃべり方はどうにかならないのか? ゴールデンサファイアント」
「そうね、たしかにそのしゃべり方はどうかと思うわ」
「おいおい、マジかよ! お二人さん! 俺のどこがおかしいんだよお!」
「だから、その無駄にリズミカルなしゃべり方のことを言っているんだ」
「そうよ。私たち以外の誰かと話す時もそのノリで話す気なの?」
「これが俺のアイデンティティ! 何人《なんぴと》たりとも、止められない! それが俺のディスティニー!」
「ダメだな。これは」
「ダメね。話が通じていないわ」
「仕方ない。我々だけで仕掛けを作っておこう」
「そうね、そうしましょう」
「おいおい、お前らどこ行くの! 俺も連れてけ! お役に立つぜ! アリの凄さを教えてやるぜ! 顎《あご》の力はマジパネェ! 自分の体重以上の物を軽々運べる、俺たちこそが地上最強生命体!」
前世がラッパーだったのかは分からないが『ゴールデンサファイアント』は『ハトパーズ』と『ウシトリン』の後に続いた……。
ここには名前の通り、たくさんの蒲公英《たんぽぽ》が一年中、咲いている。
ここで告白して結婚式を挙げたカップルは幸せになれるという伝説がある、ちょっとした観光スポットである。
ただし、ここには『蒲公英《たんぽぽ》の女王』がいる。
それを怒らせてしまうと、この辺り一帯の蒲公英《たんぽぽ》が全て枯れてしまうという噂《うわさ》がある。
だから、ここにある蒲公英《たんぽぽ》は持って帰ってはいけない。
もし、一本でも持って帰ったら、女王様を怒らせてしまうのだから……。
この世界の動植物たちが独自の進化を遂げている理由はよく分かっていないが、その理由が判明する日はきっと訪れるであろう……。