コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
認知度
・・・・・・・・・・
柱合会議が始まる前。
他の柱に、ヒジリマコトについて聞いてみることにした。
「なあ、伊黒。お前、ヒジリマコトって隊士知ってっか?」
「知らんな。誰だそいつは?」
「宇髄。ヒジリマコトって奴を知ってるか?」
「なんだその地味な名前。俺はそんな奴知らん」
「煉獄は?」
「む!そのような名前の隊士はまだ会ったことないぞ!」
胡蝶の言っていた通り、手掛かり無しか。
まあ他にも聞いてみるか。
「…おい冨岡。お前、ヒジリマコトって知ってるか?同じ水の呼吸の使い手だろ」
「……一度任務で一緒になったことがあるが…そいつのことはよく知らない。任務が終わったらすぐに姿を消してしまったから」
冨岡にしてはよく喋ったほうだな。しかしこいつも情報を持っていなかったか。
「悲鳴嶼さん。ヒジリマコトって奴をご存知ですか?」
「……ヒジリマコト……。ああ、あの子は…謎が多いな。…悪い子ではない。彼には彼の事情があるのだろうが、あまり他人を寄せつけないようにしているのが伝わってきたのを覚えている」
確かにこちらから話し掛けなければ、さっさとどこかへ行こうとする奴だな。
「…何か、彼は大きな秘密を握っているようにも思えたな」
「秘密、ですか」
「わざと自分と他人の間に不自然な程の距離を置いている印象を受けた。…何か他人には知られたくないことがあるかのような」
目の見えない悲鳴嶼さんでも感じているヒジリマコトの印象。
神出鬼没で、淡々としていて、他人を寄せつけない雰囲気の持ち主。
「不死川さん。ヒジリさんについてそんなに気になるんですか?」
「え!え!?もしかして不死川さん、その“ヒジリさん”のことが好きなの!?きゃーっ!私応援してるからね!」
胡蝶と甘露寺。後者に至っては物凄い勘違いをしている。
甘露寺は“ヒジリマコト”が女だと思っているようだ。隣で胡蝶が可笑しそうに肩を震わせていた。
「そういうんじゃねえから」
「いつでも相談に乗るからね!みんながいるとこじゃ話しづらいだろうし、2人で全然いいからね!」
「だから違ぇって」
伊黒にぶっ飛ばされちまう。
あとは。
時透にも一応聞いてみるか。覚えていないかもしれないが、まあダメ元で。
「なあ、時透。ヒジリマコトって奴知ってるかァ?」
「ヒジリマコト……。聞いたことあるような、ないような。…どんな容姿ですか?」
「容姿ィ?…栗色の髪に、青紫の目で、身長は…甘露寺くらいかな」
時透は首を傾げて何かを考える仕草をしている。そして、何かを思い出したように小さく声をあげた。
「…あ」
「どうした?」
「オオルリみたいな人か。知ってますよ」
おおるり…って何だ?いやそれよりも、時透がヒジリマコトを知っているのが意外だった。
「何回か一緒の任務にあたったことがあります。怪我した僕にそのへんの葉っぱをちぎって揉んだのをつけて手当てしてくれたり、身体が冷えてる僕に上着を貸してくれたりしました。優しくて僕は好きですよ」
「へえ……」
年下には優しいのか。時透は記憶を維持できないわりにヒジリマコトという人間を認識しているようだ。
「マコトさんがどうかしたんですか?」
名前呼びするくらい懐いているのか。
「…いや、同期で同じ歳だって聞いたから飯に誘ったはいいものの、奴について何も知らねえから何か情報が欲しいと思ってな」
「ふーん…。いいなあ。僕もマコトさんとごはん行きたい」
「会ったら言っといてやる。俺も一緒より2人がいいだろ?」
「うん。お願いします」
時透が微かに笑った。こんな顔もするのかと内心少し驚く。
「お館様のお成りです」
ご子息ご息女の声に、俺たちは1列に並び、頭を垂れた。
つづく