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すると先ほどとは違って、扉が静かに開き。俺直属の副官。|石蕗《つわぶき》さんが入って来た。
長身に黒い隊服。
黒髪を後ろに撫で付け、額を出した姿といい。
眼鏡も掛けていて、数学教師みたいだと思ってしまう。
そんな石蕗さんは俺より年上だが、俺に信頼を寄せてくれている頼もしい部下の一人だった。
「杜若様。夜分遅く、非番の時間に申し訳ありません」
石蕗が姿勢良く頭を下げるので「問題ないです。石蕗さんこそ夜遅くまで、ありがとうございます」と軽く返事をした。
「さて、何かありましたか?」
俺の言葉に机へと近寄り、石蕗はカチャリと眼鏡のツルを上へと押し上げてから口を開いた。
「はい。ご存知の通り。ここ十七年前から妖の動きは活発になり。帝都の結界付近、およびその周囲に出現が多く見られています。しかし、五家が穿った結界。さらに帝による結界が妖の侵入を常時防いでいますが、あまりにも小さな小物の妖は、結界の目をすり抜けてしまいます」
結界は壁や防波堤のようなもの。
大きな波は受け止めるが、多少の水漏れはする。
それと同じこと。
漏れたものは常に小物狩りをしているし、大物は帝都を目指す前にこちらから、討伐しに行ってる。
民に不安を与えないように、妖の情報も操作している。
そのようなことは今更過ぎるが、石蕗さんの言葉に耳を傾ける。
「そう言った帝都を中心に現れる、出現する妖を長期に渡って調べ続け。妖の研究第一人者。五家の一柱、|梅桃《ゆすら》家との協力もあり、あることが判明しました」
説明じみた口調。
真面目な表情からもこれは、あまりよろしくない報告だと思った。
「石蕗さんらしくない。いやに勿体振りますね。どうぞハッキリ言って下さい」
「……はい。先に結論だけ言います。近日中にこの帝都に大妖──土蜘蛛が出現します」
「!」
その言葉に驚き、気がつくと俺の手は愛刀に掛かり。強く柄を握り締めていた。
そして背筋を正し「詳細をお願いする」と静かに聞き返すのだった。