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雨の中、僕はぬかるんだ地面に嫌悪感を抱きながら歩いた。靴はとっくのとうに脱げてしまった。今がどこなのかはもう分からない。恐らく静岡か横浜だと思う。腹痛が絶えず襲ってくる。 上腹部の為胃かなにかだろう。元東京に着いたら1度休もう。なんて考えていた。
そんな中、僕の前に人を食べてきたのだろうと分かる人型ではないナニカが襲って来た。僕は元東京と反対方向に歩いていたのだろうか。否。ナニカの後ろには大きいタワーらしき物が見えるため、合ってはいるようだ。ではなぜ人を食べるナニカが彷徨いているのか。僕はそんな風に自分に問いては考え、問いては考えを繰り返しながらナニカに見つからないようそっと息を殺して歩んだ。だがナニカは人を食べている。もちろん鉄っぽい匂いが辺りを立ち込める。
僕は再びの吐き気に襲われながらも無事何とか元東京に着いた。恐らく今の僕の顔は真っ青か真っ白だろう。東京に着いて安心したその瞬間、僕は急に力が入らなくなり膝から崩れた。膝を痛めてしまいそうだ。なんて考えても、力は入らない。
床に這い蹲る様な形で安定した僕は、異様な匂いにまた吐き気を覚えた。よくよく考えれば、僕は瓦礫の下敷きになって少し出血した後、盛大に吐き、ぬかるんだ地面で転び、ナニカの残り香に晒されて来たのだ。それはもう想像を絶する匂いだ。流石にもう吐く物も体力も無いのか、僕はその場で目を閉じた。