「鈴、ごめんね」
彼は悲しそうな目をして私に謝りました。
「なんで謝るの?」
「だって七瀬さんと練習したかったかもしれないし、」
「私は颯太くんと帰りたいって思ってたよ。」
思い返してみればとてつもなく恥ずかしいことを言っている気がします。
顔が熱くなっているのが分かります。
彼の方を見ると彼も顔を真っ赤にして俯いていました。
「お、俺も鈴と帰りたかった、です、。」
更に顔を赤くして彼は言います。
また少しだけ期待をしてしまいました。
「鈴は、好きな人いるの?」
そう聞いてくるのは幼馴染の川島 俊紀です。
家族ぐるみで仲が良いのでこうしてよく夕飯を一緒に食べます。
いつも通りリビングでゲームをしていました。
「えー、俊ちゃんに関係無いよ〜」
「関係ないってなんだよ!仲良い男とか居ないの?」
真顔で答える彼よりも思ったことが顔に出ちゃう彼の方が愛おしく感じました。
はやく会いたいと思いました。
「まぁ俊ちゃんは幼馴染だから、教えてあげよう。」
「なに居んの?」
少し眉が動いたのが見えました。
俊ちゃんは負の感情になると眉が動きます。
今のは勘違いという事でいいのでしょうか。
「まぁね、凄く優しくて素敵な人」
「その人俺知ってる?」
画面を見ながらも興味深々に話を聞く俊ちゃんは昔から何も変わりません。
私のことになると親みたいに干渉して絶対守ってくれて心の優しい人です。
そんな彼にだからこそ話したいと思いました。
「さぁ?どうだろう。」
「そう、」
「名前は?」
俊ちゃんは私と同じクラスで彼は隣のクラス。
もしかしたら接点があるのかもしれません。
言うのを躊躇ってしまいます。
「んー、」
「隣のクラスのさ、吉野 颯太くん」
テレビ画面を見ながら答えを出すと隣からはなんとも返っては来ません。
横目で俊ちゃんを見ると画面をじっと見つめピクリとも動きません。
「俊ちゃん、?」
「あぁ、ごめん。吉野か。うん。そっか。」
「え?うん。」
「ごめん今日はもう帰る。じゃあな。」
「え?あ、うん。また明日。」
俊ちゃんはいきなり立ち上がり黙ったまま帰って行きました。
私はなにかしてしまったのでしょうか。
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