「クリスマスは、別荘で過ごしませんか?」
言う彼に、こくりと頷いて返した。
あの素敵な別荘のことを思い浮かべると、「イブをあそこで過ごせるなんて、嬉しい……」と、心の声が口をつく。
「私も、あの別荘でのクリスマスは初めてなので、君と過ごせたら嬉しいと」
応える彼の肩に、
「……先生は、私にたくさんの初めてをくれるんですね…」
そっと頭をもたせかけた。
「初めてをもらっているのは、私の方です。あなたからは、いつもいろいろな初めてを贈られているので」
顎の先に片手が添えられて唇が重なる。
「君といられて、幸せです」
「…ううん」と首を振ると、「私の方こそ……ん…」言葉の先がキスで塞がれる。
「私は、君といられる以上の幸せを知らない」
甘い台詞とともに口づけが深まり、身体がぎゅっと腕の中に抱き締められた──。
──彼とクリスマスを過ごすことになって、プレゼントはどうしようかとずっと考えていた。
私の精一杯の気持ちをあげたくて、それを形にするにはどうしたらと考えあぐねた末に、久しぶりに手編みをしてみようかと思いついた。
編み物は学生時代に手芸部で習っていたこともあって、少しだけ自信もあった。
しまい込んでいた編み棒を探して見つけ出すと、彼に似合う色味の毛糸を買いに走った。
どの色がいいかなと毛糸の棚を見ながらさんざん思い悩んで、いつもあの人はシックな色合いのスーツだからと、ブラウン系を選んだ。
クリスマスに間に合うように編み始めながら、喜んでくれたらいいなと思いひと目ずつ編み込んでいった……。
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