テラーノベル
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──────八幡さん視点──────
────ああやって、意気込んでみたはいいものの。やはり、相手にしずらいと感じる。
普通、この程度の神ならば遊んでも勝てるのだが、この相手にわ私は中々本気を出せずにいた。理由はいくつかあるが、やはり。──────脳内で、私の元ご主人の顔がチラつく。相手の顔が、よく見ると、似ているような気がして。一瞬、ご主人の微笑みと、そいつの笑みが重なってしまう。
「──────ッ!」
「考え事か?危ないぞ」
武神の回し蹴りを間一髪で避ける。───危なかった。本当に、ギリギリまで迫ってきていた。一瞬でも正気に戻るのが遅かったらと思うとゾッとする。こいつと戦うのは調子が狂い、本調子が出ない。相性が悪い。そう、一言で言うのは簡単だが。
「『地殻変動』ッ!」
「ッ!?その技どこでッ!?」
相手がそう叫ぶと、地の底が震え上がり、それに応じて地が揺れる。しかし、そんなことどうでもいい。なぜ、あいつがその技を?疑問が絶えない。『地殻変動』は、ご主人のオリジナルの技だ。昔、教えてくれたのをよく覚えている。
───”神の力を応用したもので、自分で考えて作ってみたんですよ。あなたにも教えてあげましょうか?”
古い記憶から、懐かしい、あの声が脳に響く。微笑みながら、新米の私に丁寧に教えてくれて───。そんな、思い出話が、戦闘の邪魔をする。思考が乱れ、技への対応速度が遅くなる。
『地殻変動』。ただ、自身を起こすだけじゃない。地が、自我を持ったかのように荒れ狂い、敵を滅ぼさんと言わんばかりに、相手が命を落とすまで土砂崩れなどで攻撃してくるものだ。その攻撃のほとんどが尖った大岩で当たったら、隙ができるだろう。その一瞬の隙が命取りになる。
私の眼前に迫った岩を、紙一重で交し、左後ろから来た岩を後ろ蹴りで破壊する。地が割れかけたのを素早く察知して、横飛びをし、上から来る岩を拳で叩き割る。しかし、その間にも大岩の数は止まらない。それに加え、あいつも様々な攻撃を出してくる。
「『落石』ッ!『地盤変形』ッ!『黄砂』ッ!」
「あぁ、もうッッ!!」
私は、それを捌きつつ、武神へと接近する。しかし、その直後、目に砂が入る。私は、反射的に瞬きをする。───その一瞬が命取りだということを忘れて。その瞬間、1つの大岩が弾け、たくさんの細かな破片へと変わる。目を瞑った状態で、その細かな岩───もはや小石はさすがの私でも捌ききれず、いくつか当たってしまう。かすった程度だが、その鋭い岩は、私の肌を切る。すぐに再生するが、それが命取りとなる。
───私の肌から微量の血が出る。
血が突然、増幅し、私の体を飲み込んでいく。
「はははッ!君は見誤ったんだ。僕の血液操作を。」
徐々に増えた血は私の腕を覆い、動けなくしてくる。液体は、私の専門外だ。それに、岩や、砂は水を吸収せずに弾いてしまう。抵抗の手段がない。しかし、ただ見ている訳にも行かず、腕を切り落とそうとするが、腕に絡みついていた血が私のもう片方の手を蝕み始め、動けなくしていく。
「生憎ながら、自分の血だと流した分しか操れなくてねぇ。ただ、他者の血なら増幅だって、減少だって───意のままに操れるんだ。つまり我は君を出血させればもう勝ちだったんだ。それに。我は君に相性がいいみたいだな。」
腕を取り込んだ私の血は次に、足を蝕む。飛ぶか?───無駄だ。飛んだら血が消えるなんてそんなことは無い。土なら血を吸収できるか?───そんな時間はない。それに、おそらくこれはもう血なんかじゃない。液体でも、個体でも、気体でもない。『何か』だ。離れてみたらもしかしたら?───無謀だ。神界でそんなことが可能なわけが無い。この空間は神が極限まで強くなれる空間だ。それに、この空間を熟知しているそいつと、数十億年前の記憶で止まっている私。逃げ切れるわけが無い。
そんな、思考をしている最中でもご主人の顔が脳裏によぎる。良い思い出なのに、今は戦闘のノイズでしかないそれ。なぜ、今日に限ってそんなにも思い出してしまうのか。過去を、私は振り切ったはずなのに。
───わかってしまった。今。
「卑怯者め…ッ!!」
「卑怯?誰のことだ?」
「とぼけるな!!いるんだろ?もう1人、思考妨害をする神が…ッ!!」
「おやおや。君の不調を我の責任にしないで欲しいな。ま、賢い君には教えてあげてもいいが…。そんなことをしたら君のお仲間さんにバレてしまうからね。黙っておくよ。」
そう言って、血液のようなものに飲み込まれていく私を、そいつは気色の悪い笑みで見送る。───腕さえ動けば、1発ぶん殴ってやるのに。相性が悪かっただけ。ただ、それだけなはずなのに。そもそも正々堂々だったら。もし、最初から全力で挑んでいれば───。もしも、もし…。そんな、夢幻に縋るまでに、私の精神は廃れていく。ついに、口がそれに埋まる。不満を垂らす口が開けず、次は耳が覆われる。無音になった世界で、最後に聞いたのは、ご主人の声。
───良く、頑張りましたね。
その声は。私が初めて任務を達成できた時に褒めてくださった言葉だ。最後に、甘い幻を見るのも悪くない。そんなことを思いつつ、塞がりつつある目を閉じていく。
───来世は、またあの人の部下になりたい。来世でも、めめさんと、もう一度会いたい。
そんな、強欲な願いを最後に、私は完全に目を閉じる。
「───大丈夫ですかッ!!八幡さん!!返事を!!」
そんな大声が耳元から聞こえ、目を開ける。どうやらしぶとくまだ生きれていたみたいで。私は、その明るい世界の光を噛み締める。
「───ッ!!目、開いて…ッ!!」
「…はは、すみませんね。『村長』。負けちゃいました。」
「ぁ───ッ馬鹿ぁッ!!無理しないでくださいよッ!!ほんっとに危なかったんですからね!?」
「助けて、くれたんですか?」
「当たり前ですよ。仲間、なんですから!助けられる命は、必ず助けますよ!」
めめさんから散々文句を言われた後に、状況を教えてもらった。向かってくる神を殺した後、他のみんなと合流を図ろうとし、敵を殺しながら来ていたら、私が血で固められていく現場を発見。そのまま油断しきっている地の神を鎌で殺し、そして、今介抱してくれてるらしい。
「…ありがとう、ございます。情けないですね。あんなに自信あったのに、負けて。」
「あれは八幡さんと相性が悪すぎたからしょうがないです。それに、妨害もあったみたいですし。どうやら、思考操作系の神がいるみたいです。私は神なので効かなかったですけど。」
「私との相性が悪いって…逆にめめさんが相性悪い敵なんているんですか?」
「そりゃいますよ。例えば光属性の敵とか、魂がない敵とか。」
「限定過ぎますよ、それ…。」
私がそう苦笑いすると、めめさんはドヤ顔で死神ですから!と自信ありげに言う。あぁ、やっぱり輝いている。この光は、あまりにも眩しすぎるな、なんて思いながら私は目を閉じる。少し、疲れてしまった。しばらく、休ませて欲しい。
「───え?八幡さん寝ようとしてます?」
「少し眠いので、寝させてもらいますわ〜」
「ちょ!?死亡フラグ過ぎません!?」
「ほんとに少し疲れてるだけですよ。」
そう言って、私は壁に横たわる。めめさんが、やれやれ、と言った様子で鎌を持ちながら。
「しょうがないですね。守ってあげますよ。」
そう言ってくれる。優しいな、なんて思いつつ私は目を閉じかけた──────。
ここで切ります!皆さん!八幡さん、死んだと思ったでしょう?死んでないんですよねーこれが!まあ、まだ居た方が面白そうですしねー。
はい!今回で240話達成です!うーん長い!もしかして365話くらいまで言っちゃうんですかね?さすがに無理な気がしますけど…。
まあ、それは置いておいて。今回はルカさんを描きました!早速ドーン!
これは能力発動時ですね〜!弱点を消す能力に名前をつけました!『絶対封殺(バニッシュ・フォールド)』です!厨二くさい名前ですが、そもそも異世界なんだから、かっこよく行きたいじゃないですかーヤダー。まあ、個人的には雰囲気がよく書けたので良かったです✌️
それでは!おつはる!
コメント
6件
絵に書いてある能力名と小説で書いてある能力名違うんですけど、これってどっちが正解なんですか?
いきなりコメント失礼しまーす! やばい、、、最後のrkのイラスト 好きすぎる、、、!!今度本編 1話から見てみます!!!
小賢しいのもある意味神っぽいのかしらね