テラーノベル
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「……わあ、すごーい! お日様みたいな匂いがする!」
声がしたかと思うと、俺の背後にいつの間にか古明地こいしが立っていた。無意識に潜む彼女の登場に、不老不死になった俺ですら心臓が止まるかと思った。
「これ、私が全部食べていいんだよね? いただきまーす!」
こいしが一切の躊躇なく、プラズマ状の光を放つ土鍋に手を伸ばす。その指先が熱々の鍋に触れる直前――。
「……ダメよ、こいし。それはこの人たちが命(と白だし)を懸けて作ったものよ」
さとりが鋭い声で制した。同時に、さとりのサードアイから伸びる見えない力が、こいしの動きをピタリと止める。
「えー、お姉様ケチー。減るもんじゃないし、いいじゃない」 「減るわよ。それに、今のその鍋……普通の人が触れたら、味を知る前に存在が蒸発するわ」
さとりは溜息をつき、俺の方を向いた。
「料理人さん。妹が失礼したわね。……でも、彼女の言う通り、その鍋からは地底の住人を狂わせるほどの『魔力』を感じるわ。……早く、その封印を解いてちょうだい。これ以上待たされると、私の理性が先に蒸発してしまいそうよ」
「……分かったよ。じゃあ、行くぞ。地獄の底を照らす、究極の一杯だ!」
俺は耐熱布(という名の、霊夢が適当に結界を張った布)で土鍋の蓋を掴み、一気に引き上げた。
ドォォォォォォン!!!
蓋を開けた瞬間、黄金の蒸気が爆発的に噴き出し、地霊殿の広間を埋め尽くした。 そこには、核融合の超高圧でトロトロに溶け、白だしの琥珀色に染まった**「地獄牛のすじ肉」と、芯まで黄金に透き通った「大根」**が鎮座していた。
「……っ!!」
お空が、こいしが、そしてさとりまでもが、その光景に言葉を失う。 俺は慎重に、不老不死の力で熱さに耐えながら、全員の器にそれを取り分けた。
「さあ、食え! 地底の熱にも負けない、世界一熱くて美味い煮込みだ!」
「あふっ、あふあふ……! っ、うわああああ! 何これ、お肉が……お肉が口の中で核分裂してるみたいに解けるよぉぉ!!」(お空)
「……本当だわ。白だしの優しい味が、この荒々しい肉の脂を完璧に手懐けている……。地底の怨霊たちも、これを食べれば成仏してしまうんじゃないかしら……」(さとり)
「あはは! 美味しい! お姉様、これ食べると心がポカポカして、何も考えられなくなっちゃうね!」(こいし)
地底の王たちが、汗だくになりながら(俺はもっと汗だくだが)、必死に熱い煮込みを口に運んでいる。その様子を見て、霊夢と魔理沙も「私たちのも残しておきなさいよ!」と割り込んできた。