テラーノベル
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執事のイースランが、椅子に座って仕事をしている時だった。可愛らしいお嬢様が、ウサギのぬいぐるみを抱きしめながら話しかけてくる。彼女はフォオナ。一人っ子で、家にはほとんど両親がいない。唯一話せるのは、博識のイースランだけ。
異世界から日本に引っ越してきて、早10年。すっかり彼女も大きくなり、日本に馴染んでいた。お嬢様ではあるが、一般的な庶民とも交流がある。
フィオナ「ねえねえ、イースラン」
イースラン「なんだい?フィオナ」
フィオナ「私、人間の体についてすごい発見をしたわ」
イースラン「一体何を発見したんだ?」
フィオナ「実はね、人間って……左利きが少ないのよ」
イースラン「そんなことか!誰でも知ってるだろ! 世界的に見ても左利きは10%、右利きは90%だ。この割合は50万年間、ずっと変わってないらしいぜ」
フィオナ「え、そうなの?画期的な発見をしたと思ったのに! でも、どうして右利きが多いのかしら」
イースラン「不思議か? じゃあ今回は、人はなぜ右利きが多いのかについて話すぜ」
フィオナ「とても気になるわね」
イースラン「人間に右利きが多い理由は諸説あるが、有名な説を解説するな」
フィオナ「わくわく」
イースラン「まずは、人は道具を共有するから説だ」
フィオナ「道具を共有?」
イースラン「ああ。使う手を片方に絞った方が、道具を作る時に一種類で済むだろ?」
フィオナ「確かにハサミとかは、右利き用と左利き用の両方を作る必要があるものね。普通のハサミを左手で切ろうとすると、失敗するわ」
イースラン「そうだな。ハサミに限らず多くの道具は、片方の手で使いやすいように作られているな。でも、だからといって右利き用と左利き用を作るのは大変だろ?だからもともと左利きの人も右利き用の道具を使うようになって、人類全体が段々と右利きに矯正されたってわけさ」
フィオナ「なるほど、そういうことね」
イースラン「でもフィオナ、この説には問題があるんだ」
フィオナ「え?何?」
イースラン「この説だと、左利きが多い文明があってもおかしくないんだ」
フィオナ「あっ、確かにそうね。利き手が右に限定される理由が、全くないわね」
イースラン「そうだろ?たまたま左手をメインに使うようになったっていう、地域や国があってもいい。でも実際は50万年間、全世界共通で右利きが多いんだ。だから道具を共有する説じゃ、ちょっと説明がつかないんだぜ」
フィオナ「そうかも!って思えるくらい、ピンとはきたけどね」
イースラン「それじゃ、次行くぜ? 二つ目の説は、左脳が発達したから説だ」
フィオナ「えっ、脳?なんの話?」
イースラン「フィオナにも、分かるように解説するぜ」
フィオナ「5歳児でもわかるようにお願いするわ」
イースラン「人間の脳は右と左、右脳と左脳に分かれているのは知っているか?」
フィオナ「それはなんとなく知ってるかも。病院とかのポスターで、脳のイラストを見かけたりするもの」
イースラン「それは良かった。脳は神経を通して体に命令を伝えるんだけど、その神経は体に命令が届く途中で交差してるんだ。だから右脳は左半身、左脳は右半身を動かす仕組みになっているぜ」
フィオナ「左右が逆なのね。でもそれのどこが、利き手に関係あるの?」
イースラン「いい質問だぜ、フィオナ。左脳には、言葉の理解や表現を司る言語野って部分があるんだ」
フィオナ「げんごや?初めて聞いたわ。それがあるから人間は言葉を話せるの?」
イースラン「その言語野があるおかげで、話せるし言っている意味が理解できるんだ。7万年前から人間は言葉を使い続けて、言語野である左脳が発達してきた」
フィオナ「あっ、分かったわ!発達した左脳が右を動かすから、右手の方が器用なのね!」
イースラン「正解だぜ!人類が言葉を話して左脳が発達したからこそ、右利きばかりになったのさ」
フィオナ「まさか、言葉と利き手が関係するなんて意外だわ」
イースラン「語彙力のないフィアナでも、ちゃんと左脳が発達してるんだぜ」
フィオナ「ひどい、私だってしっかり話せてるわ」
イースラン「よし、じゃあ最後の三つ目を解説するぜ。三つ目は心臓を守る説だな!」
フィオナ「これはあれね。心臓の上に拳を置きやすいからね」
イースラン「うん、捧げるな?誰を駆逐するんだ?」
フィオナ「違うの!?」
イースラン「なんであってると思ったんだよ。心臓はわずかだけど、胸の左側に寄ってるだろ?」
フィオナ「うん。左から鼓動が聞こえるし、わりとみんな知ってることよね」
イースラン「そこで心臓に近い左手が心臓を守る役割、右手が攻撃の役割を担うって考え方だ。攻撃の手は、敵の心臓目掛け動かせて器用な方がいい」
フィオナ「左手に盾、右手に剣を持っている人のイメージが浮かんだわ」
イースラン「そのイメージでバッチリだぜ。古来からの人の戦い方だからな。左手で防御、右手で攻撃のスタイルが、長い時間かけて受け継がれた。戦いの少ない現代にも繋がって、右利きが多くなったんだ」
フィオナ「うーん。どこの国でも獣と戦ったり、人同士で争った歴史があるもの。納得しちゃうわ」
ruruha
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コメント
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「右利きが多い理由」、楽しく読ませていただきました!フィオナとイースランの掛け合いが軽快で、雑学がするっと頭に入ってきました。特に「左脳が発達したから説」が一番しっくりきたのと、フィオナが「心臓を守る説」で盛大に勘違いしてるシーンが思わず笑っちゃいました😊 続きも気になります!