それが何かもわからないまま、ローションガーゼというものをレダーさんは始めた。
ベットの宮に堂々と置いてあるローションを、勝手に私の持ち物から取ったガーゼにかけた。そして洗うような動きでガーゼにローションを染み込ませている。
その布をどう使うのか予想はできないが、ローションが混ざる水音に何となくそういう気分になって、我慢するように下唇を噛んだ。
「まーこれは1人でも出来なくはないけど。2人の方がやりやすいでしょ」
「……何をするんですか?」
「んー?んー……
おかしくなっちゃうくらい気持ち良い、らしいこと」
実行したことはないのか。人体に害はないのか不安になる。
向き合って座るレダーさんは私のズボン、下着を一気に下ろしてローションに塗れたガーゼを、まだ期待もしていないそこに当ててきた。
「っあ゙……!?」
ひんやりしたローションに、少しざらついたガーゼの感覚。知らない刺激が 身体中をビリビリと走った。
急に服を下ろすなとか、そういう文句を全て塗り替える強い快楽。
これはまずいと、脳が危険信号を出した。
「あはは、先端とかにこのガーゼをこするんだってえ」
「レダーさん、これ、あの」
レダーさんが手で広げ伸ばしたその布を言った通りに私の先端にずりゅっと擦り付けた。
「うあ゙っ、ちょっと……無理で、す」
「なにい?」
「あぁ゙っ!?♡」
彼はわざとらしくとぼけて、今度は往復して絶えず擦り続ける。
知らない、強い、気持ち良い感覚に耐えられず指先にピンと力を入れた。
わからない、こわい。縋るように正面のレダーさんの首の後ろに腕を回す。
「とめ゙てくらさっ……待って、くだ、さ、あ゙ぁっ♡」
快楽を逃がすべく体を捩る中でもかろうじて眼鏡はかかっているのに、視界が悪い。
脳内が気持ち良さだけで埋まって、刺激を受けたそこの触感以外の五感がバカになった。
何となく涙を流している気がする。
みっともない自分の声が聞こえる気がする。
体の別のどこかも触られている気がする。
レダーさんが笑っている気がする。
曖昧な脳ではどれも確信には至らない。そこまで頭が回らない。
やがてやっと手を止めたレダーさんの顔を、息切れしながらも精一杯の力で睨んだ。
「はぁ゙っ、はぁ……れだあ、さん」
「いっぱい出たね?」
「っは……」
思わず下を見ると、2人の汗と自分のであろう白い液がローションに混ざっていた。信じられないほどの快楽に溺れる間に、いつの間にか何度か達していたことを悟る。
……何が何だか訳が分からなかった。ただただ気持ちいいしか無かった。そう思うと知らぬ間に達したのも当然なのか。
「きもちよかったねえ」
「こ……怖いくらいに」
眼鏡にまで飛んでいた白い液をレダーさんが拭ってそのまま眼鏡を外してくる。
ぼやけた視界で悪魔が笑った。
「じゃあ、後5回!」
「は?ちょ、や、め゙っ!?あ゙っ♡」
「怒んないでよー」
「いきなり始めるなんて。服と眼鏡くらいは片させてください」
いつからか気を失って、目が覚めたら終わりだけはご丁寧に綺麗に体は洗われていた。その自分の体を見てから、自覚するほど冷たい目でレダーさんを見ると憎いことにヘラっとしている。
「いーじゃん。気持ち良かったっしょ」
「……このような過度な自慰は推奨できません」
「自慰じゃない。2人だから性行為」
「はあ……?」
そういう問題では無いと呆れてため息をつく。重力に負けてベッドに身を預けた。それに合わせてかレダーさんも隣に寝転ぶ。
「……ねえそういえば、ぐち逸も俺んこと求めてよ」
レダーさんがぽつりと呟いた。
既に多くの人から頼られているこの人にも承認欲求のような物があるのかと、少し意外だった。
「貴方も求められたいとかあるんですね」
「……あー」
布団に潜って眠気眼を擦った。過剰すぎた快楽に体が耐えられていない。
「くぁ……もう寝ましょう。おやすみなさい」
「ふふ、そーだね。……おやすみ」
大きな手のひらに撫でられた感触がして、そのまま重い瞼を閉じ意識を手放した。
「求められたいってか……俺を求めちゃうお前が見たいんだけどね?」
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