「あの、八葉峰くんのクラスってどこですか?」
職員室でキレイな人間の先生に聞く。顎に手を添えて少し悩んだ顔を見せた後、ハッと思い出したように教えてくれた。
「あなた1ーAでしょ?八葉峰君は1ーDよ」
「ありがとうございます」
私はその人にお辞儀し、職員室を後にした。
その後、レイを置いてきてしまったと思いながら、よく分からずに、その男の子を探していた。
1ーD組の前に着くと、また金髪の人が前に現れた。はあ、はぁと荒く息をしており、私の腕を強く掴んだ。
「やっと、捕まえた!」
息を荒くしながらも私の腕を固く持ち、そう呟いた。私は不愉快でたまらなかった。人間に対する暴力的な行動は禁止されているから。振り払えないことに対する不愉快なのだと思い、少し笑った。
「こっち来てよ」
また強く私の腕を持ち続け、彼に連れていかれそうになった。恐怖というのはこういう時にも感じるのだと思った。名前も知らない人間に何処かに連れていかれてしまう恐怖。
彼ははぁ、と溜息をつきこう言いながら、腕を振り上げてきた。
「返事しろよ!」
そして、大きな声で言った。私は豹変ぶりにびっくりした。
ぎゅっと目をつぶった。殴られると思った。短くても3日は休まなければいけない。あのリスのような子にもレイにも会えなくなる。壊されると思った。
その時、遠くから1度聞いたことのある声がした。
「やっ、やめなよ…」
それは私が会いに行こうとした人間だった。細身の彼は到底勝てないだろう。私の計算でも彼は大人しく殴られてしまうという計算結果だったからだ。
金髪の人は荒々しい声を出した。
「お前に用はないんだよ!俺はこの阿音に用があるんだよ!」
そうすると肩をビクッと動かした後、彼は言った。とても大きな金髪の人に負けないくらいの声で。金髪の人間に体当たりした。
「僕の恩人を離せー!」
そうすると金髪は少し動いたがかすり傷ひとつもしていなかった。彼はボールのように跳ね除けられてしまい、しばらくして金髪の人間を叩こうと思った。禁止されているはずなのに
バシッ
廊下に響くその音は私が金髪の人間の頬を叩いた音だった。
「離して」
私がそういうと顔を真っ赤にして私の胸ぐらを掴んだ。そして、言う。
「あぁ、クソどいつもこいつもバカにしやがって」
そして私は殴られた。
『女の子の顔は殴ってはいけないわ』と言っていたお姉様達になんて言われるかななんて呑気に考えながら、3発殴られた。お腹と顔それぞれ1回、2回。
痛いという感情はなかったけれど、唇からは血がお腹には青アザが出来ていた。先生はすごいなぁと思っていたら、レイが通りかかった。私の顔や衣服の乱れを見て、廊下を通っていた人全員をギロっと、睨んだ。
そうすると金髪は少し震えた声で、
「俺が悪いんじゃない!女の癖に俺に歯向かうからだッ!」
レイの目は茶色になっていたはずなのに真っ黒になっていた。
私はまずいと思ったが内部でなにかが壊れてしまい、動けなかった。近くにいた人々はレイを恐れて、金髪を助けようともしない。
そこで、彼が小さな声で口を開いた。
「怜音さん!落ち着いてください」
その呼び掛けに答えたように、レイは彼の方を向いた。だけど、その口から出た言葉はとてもいい言葉とは言えないものだった。
「あなたは、八葉峰 遥でしょう?止めないでくれる?妹が殴れたのよ」
振り返ったレイを後ろから殴りかかろうとしてきた金髪はレイが振り上げた右腕が顔にあたり、倒れた。そして、レイは金髪の顔を近づけて言った。
「あなた達みたいな人間がいるから私達(AI)が苦労するのよ!汚らしいゴミめ!」
私はレイが本当に私の知っているレイなのかと驚きを感じた。
私はむせながら、レイに話しかけた。
「ゴホッゴホッ、レイ…」
そうするとレイは金髪のネクタイを持ったまま床に引きずりながらこちらに来て言った。
「アイ…、私がやり返すからね…、そこの八葉峰遥!」
大きな声で彼の名前を呼ぶ。
「はっ、はい!」
「アイの目にこのゴミが入らないようにするから、数人と協力して担架持ってきて、アイを保健室に運びなさい」
呆気を取られてしまった。先生に怒られてしまうなと恐怖を感じた。
「分かりましたッ、」
そうすると2分もしないうちに担架を3名ほどが持ってきて私を乗せた。
でも、途中で担架が壊れてしまい、遥くんの背中に乗せてもらった。少々恥じらいを感じつつ、彼の夜空のような青みがかった髪の毛と瞳が綺麗だなぁと思いながら、私は意識を失い、スリープ状態になってしまった。