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「それでは、俺は車の中で待機していますので、楽しんで来てください!」
「ありがとうございます、いってきます」
「何かあったらすぐ連絡しろよな?」
「はい、分かってます。行ってらっしゃい!」
食事を終えた三人は店の前で別れると、三葉は地下駐車場へ、朔太郎と咲結は上の階から見て回る為にエスカレーターへと向かって行った。
「さっくん、どこから見ようか?」
三階まで上がってきた二人は手を繋いで歩きつつ、咲結が朔太郎に「どこから見ようか」と問い掛けるも、
「んー? 咲結が見たいとこからでいいよ」
朔太郎は咲結に楽しんで貰おうとショッピングモールへ連れてきた事もあって、咲結が見たいところで良いと答える。
それを聞いた咲結は少し悩む素振りをした後で、
「うーん、そうだなぁ、あ! それじゃあさ、私、前から欲しかった物があるんだけど……それを見に行くのでもいいかな?」
何やら欲しい物があるのでそれを見に行きたいと告げた。
「おう、いいぜ」
「ふふ、嬉しい! それじゃあね……あっ! あのお店にしよう!」
朔太郎が快諾してくれた事で嬉しくなった咲結は笑顔を向けながら辺りを見回し、指差したのはファンシーグッズが売っている雑貨店。
朔太郎は真彩との買い物に付き添う事が多々あり、そういったショップも何度か訪れているので周りが女性ばかりでも抵抗なく入って行く。
「それで? 何が欲しいんだよ?」
店内に入った咲結がぬいぐるみやキーホルダーが並んでいる棚の前で足を止めたところで朔太郎がそう尋ねると、咲結は少し頬を赤く染めて俯き加減で、
「あ、あのね……さっくんが嫌じゃなかったら……その……お、お揃いの物を、買いたいなって、思って!」
欲しい物が何かを口にした。
「お揃いの物?」
「うん……彼氏いる友達とかは、ストラップお揃いとか、キーケースお揃いとか……鞄に色違いのぬいぐるみ付けたりとかしてて、良いなって思ったから……」
「うーん、そうだなぁ……まあ、お揃いの物持つのは全然構わないんだけどさ、ストラップとかぬいぐるみが付いたキーホルダーはちょっとな……」
「そ、そうだよね……」
「つーかさ、お揃いならアクセサリーとかの方が良くねぇか? そっちの方が俺も付けやすいし」
「あ、アクセサリーは……その、……」
「ん?」
「……アクセサリーはね、やっぱり、記念日に買いたいなぁって思ってて……今日は別に記念日でも何でもないから、ストラップとかそういう気軽に買える物が良かったの……」
咲結は咲結なりに考えがあってお揃いが欲しいらしく、アクセサリーも欲しいが今はそれ以外の物が良いらしい事を知った朔太郎は、
「分かった。そんじゃこれなんてどうだ? この小さいクマが付いたキーホルダー。これなら鍵付けられるし、キーリングとして持ち歩くよ。色違いでさ、どう?」
すぐそばの棚に掛かっていた、小さいクマの人形が付いたキーホルダーを指差した。
「良いの? 邪魔になったりしない?」
「このくらいの大きさなら全然。鍵よりも小さいしな。咲結はこういう人形が付いたヤツの方がいいだろ? それと、クマじゃなくても良いけど……」
「ううん、これがいい!」
「そっか。じゃあ買ってくるよ」
買う物が決まると、さも当然のようにキーホルダー二つを手にした朔太郎が一人でレジに向かおうとするのを見ていた咲結は、
「自分の分は自分で買うよ?」
と朔太郎からキーホルダー一つを取ろうとするけれど、
「これくらい俺が出すって。気にすんな」
それを断られた咲結はレジまで付いていったものの、お金を出すタイミングすら与えられず、朔太郎が二人分のキーホルダーを購入してしまった。
「……さっくん、お金……」
「いいって。ほら、これ咲結の分」
「でも……」
どうしても自分の分は出したかったらしい咲結がキーホルダーを受け取る事を渋っていると、
「俺は社会人で稼いでるし、咲結はまだ学生でバイトだってしてねぇだろ? そんなヤツに金なんて出させられねぇって。そんな顔して受け取るの渋られるよりも、笑顔で受け取ってもらった方が俺は嬉しいよ? だからさ、これ、受け取ってくれる?」
お金を受け取りたくない理由とそれよりもどうしてもらえた方が嬉しいかを口にしながら再度キーホルダーを咲結に差し出した。