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「……うん、分かった! ありがとう、さっくん! お揃いが出来て、嬉しい!」
朔太郎の考えを知った咲結は笑顔を向けながらキーホルダーを受け取ると、お揃いが出来て嬉しい事を伝えた。
「やっぱり咲結はそうやって笑ってる方がいいよ。ほら、行こうぜ」
「うん!」
咲結の笑顔に癒やされた朔太郎は手を差し出すと、キーホルダーを手にしていない方の指を絡めて恋人繋ぎをする咲結。
言葉にはしなかったけれど手を繋いだ瞬間に朔太郎は、
(この無邪気な笑顔を、これからも守ってく。何があっても、絶対に……)
昨日の事も踏まえ、どんな事があっても、自分の命に替えても、必ず咲結を守らなきゃいけないと再確認した。
そして、お揃いの話題が出た際、記念日にアクセサリーのお揃いが欲しいと思っている咲結に、とっておきのプレゼントをしようと考え始めた。
「遊川さん、お待たせしました」
「お帰りなさい! いえいえ! 全然大丈夫ですよ!」
あれから少しだけ店を見て回った朔太郎と咲結は三葉が待つ車へ戻ってきた。
「それじゃあ、この後はどうしますか?」
「そうだなぁ、咲結、どうする? 帰るか?」
「うーん……」
まだまだ朔太郎と一緒に居たい思いは変わらない咲結だけど、一緒に居て出掛けたりすると、もっと無理をしかねないかもしれない朔太郎を気遣い、
「そうだね、お父さんたちもそろそろ帰って来るかもしれないから、今日はもう帰ろうかな」
自宅へ帰る選択をした事で、
「そっか、それじゃあ三葉、咲結の家まで頼むわ」
「はい! それじゃあ出発しますね」
「お願いします」
三葉は咲結の自宅へ向かう為に車を発進させた。
「またキーホルダー見てるのか?」
「だって、さっくんとお揃い嬉しいんだもん」
車に乗ってから暫く、鞄に付けたキーホルダーを嬉しそうに眺めている咲結を見ていた朔太郎。
こんなにもお揃いの物が欲しかったのならもっと早くにそれをすべきだったと反省しつつ、次はもっと喜んで貰える物を送りたいと考えながら、咲結を見つめていた。
そして、そんな二人の様子をミラーからチラリと覗き見していた三葉。
彼には恋人も好きな人もおらず、寧ろあまり恋愛自体に興味が無いのだけど、二人の仲睦まじく幸せそうな雰囲気や普段の朔太郎とは違う一面を目の当たりにした事で、恋愛をすると人は変わるものなのだと実感すると同時にほんの少しだけど恋愛という行為に興味が湧いていた。
そして、車はいつの間にか咲結の自宅近くに差し掛かる。
いつもは咲結の希望で自宅前まで送らないものの、そもそも自宅まで送迎していれば咲結が拉致される事も防げたはずと思った朔太郎は本人が断ってもこの先は必ず自宅前まで送迎する事に決めていた。
ただ、咲結としては親に恋人が居る事をまだ知られたく無かった事もあって自宅前までの送迎は望んでいなかったものの、また危険な目に遭うのも嫌だと思い、自宅前までの送迎を受け入れた。
「到着しました」
「ありがとうございます」
「咲結、また連絡するから」
「うん、私もするね」
三葉にお礼をした後、朔太郎と短い会話を済ませた咲結が車から降り、
「それじゃあ、さっくん、遊川さん、気を付けてーー」
そう言葉を掛けた、その時、
「咲結」
名前を呼ばれた咲結が振り返ると、
「……お父さん、お母さん」
ちょうど帰宅したらしい咲結の両親が少し困惑した様子で立ち尽くしていた。
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