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京都へと向かう道中。人型でありながら全盛期の力を取り戻しているであろう妖『大天狗』と対峙した妖術師。
永い時を過ごした妖と、その時間を終わらせる妖術師の戦いが始まろうとしていた。
否、もう既に出会った時点で戦いは始まっていた。
「………はぁあ!!」
「うおおおおっ!!」
槍の先端に取り付けられた鋭い刃が、俺の顔を目掛けて直進し続ける。少し反応が遅れてしまい、左頬に切り傷が出来てしまったが、なんとか初撃を躱す事に成功した。
だが所詮初撃。その後も攻撃は絶え間なく浴びせられるだろう。
「『黒影・深層領域』!!」
頬の真隣に停滞していた槍の矛先がミリ単位で動き始めた瞬間に、足場に影を作り出して下半身を全て収納する。
今度はベストタイミングで回避でき、影に沈んだ足を動かして地上を踏みしめたと同時に相手の攻撃後硬直を狙って妖術を繰り出す。
「『艶陽叉昂』」
振り上げた刀が太陽の光を吸収し、莫大なエネルギーへと変換させて相手を斬り伏せる妖術を発動させた。
そのまま刀は大天狗の胸元を斬り、傷口から吹き出された真っ赤な鮮血を全身に浴びる。
「………その程度か、若造」
懐から少し見えていた『葉団扇』がするりと服から落ち、その際に放たれた微力な風が俺へと当たる。
その時、俺が一番危惧していた状況が、想定していた出来事で最も恐れていた事が起きた。
ほんの少し、ほんの少しだけの風を浴びた俺は、氷使い達が居る自動車の付近まで吹き飛ばされて大きな壁へと叩き付けられる。
「ッガァアアア!!」
口から多くの血が流れる。多分どこかの臓器が潰れて機能しなくなったのだろう。
もしもの時に備えて全身に『治癒の術』を施しているとはいえ、突然の負傷を一瞬で治せる程の速度では無い。
膝から崩れ落ち、視線が地面と平行になる。
「…………立…て……!!」
体に力が入らない。動かす程の力が残っていないのかもしれない。
だがそれでも立たなければならない。このまま氷使い達が殺されてしまったら今後の作戦に大きな支障が出る。それは絶対に避けなければならないし、俺が絶対にさせない。
―――『強制肉体強化』を発動させるが、声に出す余裕が無い為、心の中で詠唱する。
妖力が全身に巡って筋肉の一部の様に体を支える。まるでマリオネットを操る感覚で、体に力を入れることなく全身を無理やり動かす。
「………なんとも惨めな姿となったな、妖術師。一瞬の殺し合いだったとはいえ、それなりに楽しめたというのに」
俺の前に立つ大天狗は先程とは全く違い、周囲の生物全てを死滅させてしまうほどの殺気を放ち、己を殺そうと行動を起こした妖術師を罰する為に槍を握りしめる。
「………まだ、終わっちゃ…いねェ!!」
内側に何も残っていない体を無理やり動かし、己を殺そうと槍を握る妖を、殲滅させる為に刀を手に取る。
互いに一歩も引けない。俺は物理的に一歩も引くことが出来ない。
もし俺の体が五体満足動かせる状態なら、もう少し長い時間戦い、十分に大天狗を消耗させることが可能だった。
だがその望みは潰えた、なら俺は残された道を突き進むだけだ。
「狂刀神、もう……いいだろ?」
久しぶりに、ワガママですぐ拗ねる幼稚なカミサマに会うことにしよう。
我らの天に立つ全ての主よ。人ならざる者へ終焉を齎す、全ての妖魔を寂滅させるべく我に力を与え給え。
その地に立つは常世を統べる術師の王であり、神を鏖殺し新たなる神と成った者。 故に、その御身の加護を我に分け与える事を乞い願う。
「―――『狂刀神ノ加護』」
横転した車の外からとてつもなく命の危機を感じる殺気を感じ、私は急いで脳を活性化させて車外へと飛び出る。
それと同タイミングで晃弘と創造系統偽・魔術師が目を覚まして車から脱出した。
私が目線を上げた先で見えたのは、口から大量の血を流しながらヨロヨロと立ち上がる妖術師の姿と、
「あれは………妖?人型なのにあの闘気は何……?」
恐らく一般人からの知名度が高く、長い時を過ごして来た凶悪な妖だろう。
申し訳ないが私はその妖の正体は分からず、魔力の循環を安定感させてる晃弘と創造系統偽・魔術師に何者かを伝える方法がない。
だから私は叫ぶ。
「『氷面鏡』!!」
凹凸が激しい地面を伝うように、薄っぺらい一枚の氷が素早く進行を始める。その氷は直ぐに妖術師が接敵している妖の足元へと到達し、目視で確認した私は攻撃をしかける。
少しでも氷面鏡の氷に触れた瞬間、足元から凍結が始まり、数秒の内で全身が氷へと変化させる必殺の奥義を。
だが、運命はそれを許さず、また空から見ていた神に等しい存在もそれを許さなかった。
妖の足元へと到達する寸前にて、一面に張られた氷が全て粉々に割れ、砂のように消え去って行った。
突然の出来事に理解が遅れ、背後から迫る無数の足音とその影に私は気づかない。ざっと数は数十体、今すぐ振り返って氷を作り出せば一瞬で終わる数だ。
「………う、動かない……!!」
全身が、謎の硬直によって四肢が言うことを聞かない。
いや、既に分かっている。何故ここまで体が動かせず呼吸もどんどん浅くなっていくのかを。
見られている。先程から今の今までずっと。
振り返ることすら出来ないが、空中に何か居る。それだけは確かに分かる。少しでも目を合わせれば命が無いと自覚する程の何かが。
そして、私の『千里眼』がソレを認識することを拒絶している。
千里眼の能力の一つ『未来視』は、妖術師と突如として現れた偽・魔術師が出会った瞬間に機能を失い、何も見えず真っ暗な状態となってしまった。創造系統偽・魔術師と出会った時も全く同じ現象だ。
(妖の足音が近づいてくる……このままじゃ確実に死ぬ。急いで氷を生成しないと……!!)
だが不可能だった。手に魔力が籠りはせど、それを物体(氷)へと変換するには至らない。
もう無理だ。未来も見えなければ反撃をすることすら出来ない。このまま妖に全身を食い尽くされ、魂すらも吸収されてしまうだろう。
―――あぁ、私はまだやりたいこと、一番伝えたい人に何も言えてないのに。
「『湖の乙女よ、導き給え』!!」
死を覚悟した刹那、背後を浄化の光が妖を包み込み、悪霊諸共全てを消し飛ばした。その光は私に触れる寸前まで近づき、ギリギリの地点で光が収まる。
「………晃弘!!」
瞬時に状況を理解した私は、光が放たれた方向にあった車。そこで、動けなくなった創造系統偽・魔術師を抱えた晃弘に向かって叫ぶ。
名前を呼んだ声のみで晃弘は自身の役割を理解し、創造系統偽・魔術師を道の傍らに放り投げて『双縄猟銃』を構える。
妖の大群は魔術の使用をやめた私ではなく、錬金を始めた晃弘の方向に走り出した。恐らく妖が標的を変更する起点は身体内に『魔力』が一番多く篭っているかどうかなのだろう。
「妖術の兄ちゃんが命賭けて戦ってんだ。俺だけ呑気に何もしないって訳には行かねぇだろ?」
そう言って錬成を開始した晃弘の手にある『双縄猟銃』がバチバチと大きな雷を発生させ、猟銃の銃身が一瞬で変化する。
先程まで持っていた “ライフル銃” ではなく、効率よく妖を倒すことができ、尚且つリロードが素早く出来る “散弾銃” へと形を変えた。
背後で散弾銃の発砲音と妖が叫び迫る音が聞こえる。
私は深呼吸して気持ちを整え、振り返れば100%視界に入ってしまう空の何かを視界から遮断するための手段へと出る。
妖が晃弘へと意識を向けている今、私は両足の底から後ろの数メートル離れた位置に、厚さ五センチ程の氷の壁を作り出した。
「今…!!」
体の拘束感から解放され、視線を妨げる事に成功した私は急いで妖術師の方に向かって走り出す。
先程まで恐怖で筋肉が動かせなかったせいか、足に中々力が入らず時々転けそうになる。と言うより、盛大に転がった。
地面が砂ではなくコンクリートなだけあって、結構な擦り傷ができ、ゆっくりと血が流れ出す。
痛い。精神面でどうにでもなるとはいえ、やはりこの体はまだ少女。辛いことは辛いし、痛いものは痛い。
でも、
「それでも……行かないと……!!」
ここで妖術師を失う訳にはいかない。彼は今後の計画に大切な最重要人物であり、私たちを率いるに値する男だ。
そしてこのメンバーの中で瀕死の妖術師に加勢する事が出来るのはこの場で私だけ。その私がここで諦めてしまったら、少しでも足を止めたら。
「もう……二度も同じ過ちは…!!」
私は進まなくちゃ。もう止まれない場所まで来てしまっている。魔術師を殺すと意気込んだあの時から、私はもう魔術師では無くなっているのだ。
立て、立ち上がれ、妖術師が死ぬ。
顔を上げて目線の先でヨロヨロと動き始める妖術師が見える。
もう死にそうだ、虫の息だ、妖が槍を構えた、間に合わない、もう手遅れだ、何もできることは無い、無駄だ、立てない私に意味は―――
「うるさい!!手を伸ばせ私!!」
脳内で勝手に諦めている私を、私は背後から追い越して先へと進む。不可能の壁に向かっている私を踏みつけ、不可能の壁を越える。
「―――力を貸せ、狂刀神。 『狂刀神ノ加護』!!」
「―――氷系統広範囲極級魔術。『締結の審判』!!」
妖術師と私の詠唱が奇跡的に被さり、妖に私の声が聞こえることは無かった。故に、これの技は完全に回避する事は出来ず、奇襲に成功する。
私が凍らせるのは地表の更に下の下の下。地中深くに溜まっている自然の水分。 それら全てを冷気で凍らせ、地中の泥や土を押しのけながら上を目指す。
それだけじゃ妖を足止めさせるには足りない、地面だけだともし避けられた後はどうにも出来ない。ならば地面だけではなく、空気すらも凍らせて見せる。
「…………っう!!」
腕に、手のひらに魔力を永遠に流し続けて放出する。
文言だけ見れば楽な作業に思えるかもしれないが、魔力を放出するのには多少の痛みを伴う。
と言っても、痛みは筋肉痛と同等で動けなくなるほどの激痛では無い。
だが、今の私は普段とは格段に違う量の魔力を消費して氷を生成し続ける。腕の内側から筋肉や血管が焼き切れる程の、これ以上同じような状態を維持し続ければ使い物にならなくなる程に。
「『聖剣』!! 」
背後で創造系統偽・魔術師の声がする。恐らく大技の代償である再構築を終え、晃弘の加勢に向かったのだろう。
と思ったが、聖剣の輝きは何故か大量の妖ではなく、私の方向へと向かって来ていた。背中の方からうっすらと光が近づき、私の背中へと直撃した。
そのまま私は光に呑まれて蒸発………せず、背中に当たった瞬間、光は私の背中の中へと吸い込まれて行った。
謎の出来事に私は少々困惑したが、数秒後に創造系統偽・魔術師の意図を理解した。
「魔力が……増えてる……?」
大技のために腕から魔力を垂れ流し続けて枯渇気味だった私の魔力が、先程の行為を五度繰り返しても無くならない程に回復していた。
なんと創造系統偽・魔術師は『聖剣』に莫大な量の魔力を含め、切断ではなく譲渡に特化した光を放ったのだ。
まず第一に、魔力の譲渡には直接的な接触を行わないといけない。手と手を触れるだけでも良いし、服の上から触れて魔力を体内に向けて流せば譲渡も可能だ。
だが、魔術的攻撃に魔力を込めて譲渡する方法は前代未聞すぎる。私は一度も見た事がないし知ったことがない。不可能だ。
―――しかしその創造系統偽・魔術師は不可能を可能にした。実際に目の前でやって見せた。
「………地面と空気への魔力変換は十分。創造系統偽・魔術師は不可能を越えたんだ。私も越えなきゃ、誰も救えない……!!」
地下深くの地点と周囲の空気が音を立てて凍り出し、物凄い速度で氷が生成される。
魔力の譲渡のお陰で地下の氷はその数を増やし、強度も十分すぎる硬さで地表を貫いた。その氷が足元から迫ってきた妖は、容易く全ての氷を躱して懐から何かを取り出そうとする。
「………させない!!」
第二作戦開始。回避されるのは予想済みだ、 こっちにはまだ切り札が沢山残っている。
大気中の水滴を瞬時に凍結させ、地面から生えた氷を砕き粉状に。凍らせた空気は妖の身動きを封じ、 砕いた氷は風に乗せられて妖の周囲へと舞う。
そして魔術による空中の魔力変換を行い、辺り一面に立つ生物全ての攻撃&防御的能力を最大限低下。
まるで吹雪が舞う極寒の地の様に、妖術師に効果が及ばない半径30mの全てが氷結の結晶に包まれた。
「………最大限やれる事はやった。最後は君が決めるんだ……妖術師…… 」
氷へと変換させた小さなバトンを妖術師へと託し、そのまま私は意識を手放した。大技を放った代償が今ここで訪れる。
もしこの世に神が実在するなら……もう少し、ほんの少しだけ猶予が欲しかった。妖術師が万全な状態で戦えるまでの、猶予が。
そうだ、後は晃弘とあの創造系統偽・魔術師。二人いるとはいえ、妖術師でしか討伐が出来ない妖を相手に戦っているんだ。
武器になる何かでも……作って渡すべきだっかな……?
「ありがとう、氷使い。お陰で俺は更に前へと進めるよ」
大天狗の背後でぐったりと倒れ込んだ氷使いへと感謝の意を述べ、俺は握っていた刀を振り上げる。
『この女は強い。単純な力じゃない、自身の壁を打ち砕き乗り越えた力強いその心が。勘違いはするなよ、我はお前ではなくこの女を勇者と認めた。………ならばこの女が成し遂げようと挑んだモノを無下には出来ぬ!!』
空気が歪み、妖力が集い、一点に収束する。 遥か昔に源頼光が丹波国大江山に住み、潜んでいた鬼を切り伏せた事から名付けられた名刀。
狂刀神が扱う『狂想刀・黒鶫』の神聖と『疑似創造』によって複製した国宝級の天下五剣の一つ。
『「童子切安綱」』
狂刀神の憑依に近しい妖術によって、疑似創造に必要な妖力は全て補う事が出来き、ボロボロだった身体を直して別の妖術に意識を回せる程に溢れている。
だが、憑依と言っても俺の意識と体を分離させ、狂刀神が主導権を握っている訳では無い。
あくまでも『加護』の程度に収めてあるが故、狂刀神が全力で乗っ取りに来ても無意味と化すだろう。
そして万全な状態として君臨した妖術師は、受け継いだ仲間の意志を全うする為に刀を振るう。
「お前を殺せたのは俺一人の力じゃない。氷使いを含めた仲間達の援護があってからこそだ―――『 墜ちろ、成仏し損なった化物よ』」
振り下ろされた一閃は大天狗の頭部から股下まで一度も止まることなく進み続け、永劫の刻を生きた伝説の妖を斬って見せた。
その凄まじい速度と力によって、振り下ろした瞬間に刀の先から風が起き、周囲の空気を揺らして大きな突風が発生したのだ。
斬られた大天狗は後方へと倒れ、そのまま綺麗に中心から縦に割れた。童子切安綱で斬った断面に一つの歪みは無く、真っ直ぐ綺麗な直線を描いていた。
「………っ氷使い!!」
その切断面に見蕩れてる俺はハッと我に返り、急いで氷使いの元へと走る。自ら危険を冒してまで繋いでくれた恩人だ、素早く処置を施す必要があるかもしれない。
氷の壁の手前で倒れる氷使いの肩を持ち、意識の有無を確認する。
………呼びかけても返事は無いが 呼吸は正常、死んでいる訳ではなくて魔力不足による強制休養(つまり睡眠)の状態だった。
「良かった、あれだけ多量の魔力を使って倒れたからてっきり………」
死んだ、とまでは行かないがそれ相応の代償が伴うと覚悟していたが、実際はただ眠っているだけで俺は安堵のため息を漏らした。
『治癒の術』を俺に30%、氷使いに70%の配分で行う様に妖力を調整し、晃弘と創造系統偽・魔術師が居るであろう方向へと歩き出す。
創造系統偽・魔術師の『聖剣』は魔力消費が少なく、晃弘の『双縄猟銃』も魔力をほぼ使わない。あの二人が交代で戦い続ければ妖の大群なんて簡単に壊滅させられるはずだ。
そう思い、俺は氷の壁を避けて進み、その先に広がる景色を視界に収める。
「…………………は?」
視界に映し出された景色は先程まで見ていたモノとは違い、地面は抉れ、木々は消滅し、橋は決壊していた。
俺たちが使っていた車も崖下で潰れた状態なのを目視で確認し、辺り一面が吹き飛んだ事を再認識する。
例え妖の大群に襲われたとしても、これほどまで悲惨な光景になることなど有り得ない。
この被害の爪痕を見る限り、創造系統偽・魔術師が『湖の乙女よ、導き給え』による範囲攻撃が何度も行われたのが一番有力な考察だろう。
だがしかし、創造系統偽・魔術師が『湖の乙女よ、導き給え』を使う場面は相当な強敵が現れた場合か自身の身の危険を感じた場合だけなはず。
その攻撃を何度も繰り返し発動させたとなると、もしかしたら大天狗以上の妖が居たのかもしれない。
大百足に大天狗。有名な妖が二体も連続で現れたのだ、晃弘と創造系統偽・魔術師が接敵していても何もおかしくない。
「取り敢えず、晃弘と創造系統偽・魔術師を探さねぇと……!!」
氷の壁を越えた辺りから今の今まで、二人の姿を一度も見ていない。 崖下に居るかと思って何度も確認したが見つからず、木々の中に居る気配もない。
俺は急いで『共有感覚』を繋げた『鑢 魔獣』を森の中、崖下へと走らせ 『周囲調査』の術を使用して、二人の捜索を開始する。
「………頼む、早く見つかってくれ」
俺は祈るように言い、この隙に妖が氷使いを攻撃することを危惧して急いで氷の壁のあった場所へと戻る。
氷使いの傍を離れるのは危険な為、そのまま周囲探査の術を切り、『鑢 魔獣』と感覚共有の術へと意識を集中させ、捜索を再開する。
ついでに『治癒の術』の配分を俺に5%、氷使いに95%送るために氷使いの手を握る。起きた時に色々と怒られそうだが、 今はそんな事を言っている余裕はない。
大天狗との戦いを終えた俺に与えられた少しだけの休憩時間。だが、体が休まったとしても心が休まる事は無かった。