楽し”かった”日々の記憶
今日を入れて残り17日。
今日は、あるものを持ってきた。
「癒良‼」
俺が癒良の病室に入った。
「ボードゲー厶‼持ってきたよ!!」
そう。癒良はボードゲームをやったことがないのだ。
今日を入れて残り16日。
「癒良‼」
癒良の病室に入ると、癒良は笑顔でパッと振り向いた。
「虹‼」
「今日は…」
毎日が楽しかった。
学校側も、俺の味方をしてくれていた。
でも、残り10日のことだった。
ゆっくりと病室のドアを開けた。
癒良のベッドの周りには、お医者さんや看護師さんがいた。
「お医者さん…?」
俺が思わず声を漏らした。
お医者さんは、俺を見た。
「西空さん…」
「どうしたんですか…?」
「実は昨夜、病状が急変しまして…」
そっから、お医者さんの話を聞いた。
泣くのは我慢していた。
癒良の命の灯火はどんどん小さくなっていっている。
余命まで生きれないかもしれない、とお医者さんに告げられた。
その日、1日中上の空だった。
癒良は、治療されていたため病室に入れなかった。
入れる時間は、午後の7時頃になった。
「癒良…?」
ゆっくりと病室に入った。
「虹‼」
癒良は、いつも通りの笑顔で迎え入れてくれた。
「今日は何する?」
ワクワクの笑顔だった。
癒良は、病状が悪化したことを俺が知ってるって分かってる。
「今日は、折り紙するか。」
「うん‼」
何色がいい?と聞くと、癒良は迷わずオレンジと答えた。
「折り紙してると、小さい頃のこと思い出すね。」
癒良が急にそんなことを言ったから、びっくりした。
「小さい頃、雨の日は家の中で折り紙してて、その時にオレンジの折り紙を使
ってたんだよね。」
癒良の思い出話に相づちを打った。
あの頃は、オレンジ色の折り紙でツルを折った。
俺は折り紙苦手だったから、癒良が丁寧に教えてくれたんだ。
あっという間に、午後9時になった。
「俺、そろそろ帰らないと…」
帰りたくない、と言う前に癒良が俺の洋服の裾を掴んで、
「帰ってほしくない…」
とうつむきがちに言った。
怖いんだろう。
死ぬとき誰も側にいなかったら。
俺はスマホを出して
【癒良の病室に泊まってく。】
と連絡した。
看護師さんには、『お泊りしてってもいいですよ。』と言われていた。
「分かった。帰らないよ。」
「え…本当?迷惑じゃない…?」
癒良は、泣きそうだけど、少し嬉しそうな顔だった。
「どうしてそんな顔するんだ?迷惑じゃないよ。」
その後に「幼馴染なんだから、これくらい聞くよ。」と付け足した。
「幼馴染、か…」
癒良は何か呟いたけど、聞こえなかった。
不思議で首を傾げたら「なんでもないよ!」と笑顔返された。
お医者さんに言われた『余命まで生きることができないかもしれない。』とい
う言葉が、すごく刺さった。
死んでほしくないのにな。
ずっと一緒がいいのにな。
神様、どうか
どうか…
…