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目を開けると、まだ薄暗い空が広がっていた。
そうだ。
俺、癒良の病室に泊まってったんだった。
顔を上げた。
癒良のベッドの上には、昨日折った折り紙があった。
癒良、やっぱ折り紙上手だ。
俺のくしゃくしゃなツルと比べて、癒良のツルはほとんどシワがない。
ガサッっと癒良が動いて、ベッドから癒良のツルだけ落っこちた。
もしかしたら、これは癒良が命を落とすという意味があるんじゃないか。
ブンブンと首を振って、そんなことあるわけないと自分に言い聞かせる。
俺は、落ちたツルを拾いあげた。
そして、そのツルを両手で優しく包み込んだ。
ツルが、落ちないように。
残り9日か。
窓の外で、太陽が登るのを見つめながら思う。
『余命まで生きることができないかもしれない。』
急に、お医者さんが言った言葉が頭によぎる。
余命、か。
「んー…」
癒良の声がして、後ろを振り向く。
「癒良、おはよう。」
「ふゎ〜…おはよー、虹。」
マイペースな癒良は、のんきにあくびをしていた。
「調子はどう?癒良。」
この状況で、悪いなんて言われたらどうしよう。
「ん?全然大丈…うっ…」
大丈夫と言おうとした癒良が、急に苦しみ始めた。
「!?癒良‼」
俺は、すぐにナースコールをした。
『八雲さん、どうされm…』
「癒良が‼」
看護師さんの言葉をさえぎって、俺は声をあげた。
看護師さんは『今行きます‼』と言って、ナースコールの電話をきった。
「癒良‼」
「うぅっ…っ」
苦しそうだ…汗もかいている。
癒良は左手で、左胸をおさえている。
…心臓?