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佐野の叫びが廊下に響き渡ったあと……
しばらく沈黙が続いた。
聞こえるのは、俺と佐野の荒い呼吸と、ドクンドクンと鳴る心臓の音だけ。
その時……
すすり泣く声。
ドアの向こうから、小さな震える声が聞こえてきた。
〈……如月ちゃん。〉
佐野がそっと名前を呼ぶ。
するとドアの向こうから、涙に濡れた声が返ってきた。
「……ごめん。……ごめんなさい。誰も悪くない……大晴くんも晶哉くんも、誰も悪くない……。私がいけないの……。私が弱いから……みんなを傷つけたの……。」
その言葉に、佐野の喉が詰まったように動く。
〈……。〉
「……私が“好き”って簡単に言うから。みんな……勘違いしちゃうんだよね……?ごめんなさい……恋とかよく分かんないのに……。好きって言って……みんなの気持ち、ぐちゃぐちゃにして……。」
〈……ちがっ〉
佐野が否定しようとした瞬間、如月の声がかぶせるように続いた。
「昨夜のことがあってから……どうやってみんなと接すればいいのか分からなくなったの。みんなを嫌いになったわけじゃない……ただ……どんな顔して会えばいいか分からなくて……。とくに大晴くんに……どう向き合えばいいのか……怖くて……部屋にこもって逃げてた……。」
その瞬間……
ドアが、ほんの少しだけ開いた。
〈……如月ちゃん!?〉
【如月……!?】
如月は涙で濡れた目で俺らを見つめながら、小さな声で言った。
「……私、もう逃げない。助けてもらってばかりじゃいられない……。私、頑張るよ。やっと分かったの。“恋の好き”と、“友達として好き”の違い。」
佐野は息を吞む。
如月は震えながら、一番言いにくいことを言葉にした。
「晶哉くん……私を好きになってくれて、ありがとう。本当に嬉しかった。でも……ごめんね。私が本当に好きなのは……末澤さん……誠也くんだったんだって、気づいたの。」
【……っ。】
誠也くんの喉が震える。
佐野は俯きながらも、しっかりした声で答えた。
〈……如月ちゃん。俺こそありがとう。気持ち伝えてくれて……ホンマ嬉しい。これで、ちゃんと如月ちゃんのこと諦めれる。〉
【……佐野。】
如月は涙を拭いながら小さく笑った。
「……大晴くんにも、ちゃんと言わなきゃだよね。ちょっと……不安だけど……。」
【……大丈夫。俺がそばに居てやるよ。】
如月の目が、安心したように細くなる。
「……ありがとう、誠也くん。」
ドア越しに閉ざされていた心が、ようやく少しだけ開いた瞬間だった。