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如月は、ゆっくりと自分の部屋から姿を見せた。その小さな肩はまだ震えているのに、瞳の奥だけはまっすぐな光を宿していた。
【無理せんでもええねんで……。】
俺がそう声をかけると、如月は静かに首を振った。
「……ううん。言わなきゃいけない。ちゃんと逃げずに。」
【……そっか。】
佐野も黙って彼女を見つめる。
気持ちを伝えて、振られたその直後だというのに……
それでも如月と俺の幸せを願おうとしている、そんな優しさが滲んでいた。
〈誠也くん、ついていってあげて! 大晴くん、部屋で潰れてると思う。〉
佐野の言葉に、俺は力強く頷く。
【よし、行こうか?】
如月はこわばった表情で、それでもしっかりと頷いた。
足は震えている。
でも、一歩、また一歩と大晴の部屋に向かって歩き出す。
たった数メートルの廊下が、まるで果てしなく長い道のようだった。
大晴の部屋の前にたどり着くと、如月は大きく深呼吸をした。
【……大丈夫か?】
「正直に言うと……こわい。でも……話さなきゃ。」
その言葉に俺はそっと彼女の背中を小さく押してやった。
“前に進め”と、背中で伝えるように。
「……大晴くん。その……私、話したいことがあるの……。入ってもいい?」
沈黙が落ちる。
如月の小さな声が、静かな廊下に溶けて消えていった。
しばらくして……
ドアの向こうから、かすれた声が返る。
{……入ってもええよ。俺も……話したいことある……。}
如月は不安そうに俺を見上げた。
【行ってこい!】
その一言で、如月は小さく息を吸い、震える手でドアノブを握る。
ゆっくり、ゆっくりと……
キィ……と音を立てて、扉が開いた。
こうして如月は、逃げ続けていた“本当の気持ち”と向き合うための一歩を踏み出した。