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35 - 第35話  100 101 102

2025年01月05日

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100     淡井恵子の番外編10


◇支店のイベントのその後


支店で行われたイベントの翌日の昼休みに入る直前に、総務課まで

伝票を渡しにきた市川さんからこそっと耳打ちされた。



「米本さん、ちょっと相談に乗ってほしいことがあるのでメールアドレス

教えてもらってもい~い?」


「?……あぁ、はい。いいですよ」


そしてその夜、市川さんからのメールが届いた。




『実は昨日、淡井さんと映画の話で盛り上がったんだけど、その時に映画を

見にいきませんかって誘われちゃってね。


米本さんも知ってると思うけど俺、彼女いるでしょ?


それだけでも、淡井さんとのデートはないんだけども……実は他にもデート

できない理由があるんだよね。


で、そういうことも併せて相談っていうか……淡井さんがどういう人なのか、

知ってる範囲でいいから教えてもらえないかと思って』




私は市川さんからのお願いメールを読んで『よっしゃー!』って思わず

叫んじゃった。



淡井さんの過去の数々の行状を知っている身としては

『二股くらいやってのける玉だって分かってたわー』の心境である。



翌土曜日、私たちは奇しくも……って、私が指定したのだけれど従姉が挙げた結婚式場のある

あの惨劇の起きた同じラウンジで待ち合わせをした。


いやぁ~、ここって待ち合わせなんかにちょうどいいのよ。

決してわざとじゃない。


恋人がいることは市川さんから前もって聞いていたんだけど、

この日、市川さんは彼女さんと一緒に現れた。


ほんとに恋人が市川さんのように誠実な人だといいなと思った。

彼女に誤解を与えたくないからということだった。


101     淡井恵子の番外編11


市川さんと彼女さんはとてもお似合いのカップルだった。

彼女さんは私との挨拶を終えると少し離れた席へ移動した。


「市川さん、彼女さん素敵ですね。

おふたりすごくお似合いです。


聞いてはいましたが、あんな素敵な彼女さんがいたなんて

市川さんが淡井さんに靡かなかったの分かります」



「そりゃあ、どーも。ありがとう。後で彼女に伝えとくよ。


早速本題なんだが……実は支店の誰にも話してないんだが俺と新井は

学生時代からの友達で親友なんだ。


で、ちらっと新井からは淡井さんとはいい感じになってるって聞いてたから、

昨日の彼女からの誘いに面食らってる」



「そうだったんですか」




昨日自分も淡井さんの様子を見ていたので、さもありなんと思った。


淡井さんは新井さんと市川さんが親友だなんて知らないものだから

二人をいいように手玉にとれると思っているのだろう。


淡井さん、人生そんなに甘くないですよ。


そっか、でも新井さん自身が淡井さんとのこと『いい感じになってる』って

言ってたんだとしたら……あちゃぁ~、私は絶望的なのかしら、とほほっ。


ここは聞きたくなかったかもぉ~。



「市川さん……私……」



私は感極まって万感の思いがこみ上げてくる。

オオバ―だよっ、美晴ぅ。でもでもっ、だって。



「どうした、米本!」


「すみません、自分だけ悦に入ってしまって。ちょっと興奮してます」


「えーっ、どういうこと?」



「私ね、淡井恵子さんの闇の部分を社内の誰よりも知ってると思います。

この情報はほんとにたまたま? 偶然のなせる業? で知り得たものなんです。


そしてそれに加え、自分の好奇心で更に詳しく調べてしまいまして……

市川さん、今確信しました。


私はこの日この時、市川さんのお役に立つべくして淡井さんのことを知る

運命だったのだと」



私が大仰に、だけど真剣に話していると……。

市川さんが目の前で受けて笑っていた。



「なんか、よく見えない話だけど、面白そうだよね。

ではその運命だったというわたくしめに、その話どうぞご教授くだされぇ~」


と、私との会話に乗ってくれた。



私……やっぱ、この人、好きだ。


102     淡井恵子の番外編12


そのあと、面白そうな展開になりそうだからと市川さんが待っている彼女さんを

呼び戻し、二人して私の話に聞き入った。


こんなふうにして始まった私と市川さんとの密談が終わった。

私が知り得た淡井さんの情報は全て市川さんに伝えた。


淡井さんからデートに誘われた市川さんは

『その日は都合がつかないから、またの機会に』

とお茶を濁して昨日は話しを終わらせたそうな。


それでもって彼女とメールアドレス交換しているらしい。


何故そうしたのかというと、新井さんに彼女との遣り取りをした文面を

証拠として見せたいからなのだとか。


抜かりなく自分の言い分を信じてもらうためなんだそう。


市川さんって、ほんとデキる人だよね。


「米本さんがいてくれて良かったー。

俺たちは異動で来たばかりで今の支店の人間のことはほとんど知らないし、

淡井さんのせいで下手をすると俺、恋人も友達も失くすところだったかも

しれないんだよなー。



今回の件を何とか新井を傷付けずに片付けるのに少々時間が掛かるかも

しれないけど、新井を慰めてやりたいと思ってるんだ。


その時にさ、俺と彼女、新井と米本さんとで一緒に遊ばない?

あっ、米本さん恋人いるならまずいよね?」



「きゃあ~、何ですかその友達思いの素敵な提案。

ぜんぜんっ……行かせてください。


あっ、ちなみに私、恋人もボーイフレンドもおりませんので無問題です。

市川さん、私一度でいいからダブルデートっていうのをしてみたいなぁ~

なんて思ったことあるので大興奮でございます」



「そんなに前向きになってもらえて俺も楽しみになってきたわ。

じゃあそういうことで。

また進展とかあれば連絡するね」



「OKです」



この時ほど自分の好奇心の強さを褒めてやりたいと思ったことはない。


調査していたからこその、ちゃんとした憶測の範疇ではない進言が

できたのだ。


まさか密かに想っていた人とデートができるなんて。


『人生一寸先は闇』っていう諺があるけど、私が塗り替えるわ。

『人生一寸先は幸運』が待っている……なんてね。



新井さんに恋人として選んでもらえなかったとしても、デートだけでも

いいの、良い思い出にする。


それと新井さんの不幸というか災難を未然に防ぐ手助けができることを

誇りに思うわ。GJ美晴。

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