テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
天馬くんが素早く自分のスクールバッグを開けた。
ペットボトルのキャップを外し
「水瀬、大丈夫?これ飲んで」と差し出してくれる。
震える手で受け取り、一気に飲み干す。
冷たい水が喉を通ると火照りが多少和らいだが、舌はまだジンジンと痺れていた。
「あっ…ありがと……」
僕は涙目になりながら天馬くんを見上げる。
その顔があまりにも間抜けだったのか、須藤くんがクスクスと笑った。
「天馬対応早すぎ、保護者かよ」
「水瀬が危なっかしいんだよ、あと食べさせたお前らのせいな?水瀬のこと泣かしたんだから」
「「俺らのせい?!」」
その光景を見ていると、自然と胸の奥から笑いがこみ上げてきた。
「フフ……っ」
自分でも驚くほど自然な笑い声が零れる。
いつもだったら恥ずかしくてすぐ引っ込めてしまうような感情なのに
今はどうしても抑えきれない。
「え?」
「笑った?」
須藤くんと加賀くんの声が重なる。
「3人の会話、楽しそうで…ははっ」
「水瀬ってそんなふうに笑うんだ?」
「え??」
「普段全然笑わねぇイメージだもん」
二人の言葉に改めて自分が笑っていることを意識してしまう。
頬が急に熱くなる。
「えっと…いや、その……ぅ、うん」
ごまかそうとしたけれど上手く言葉が出ない。
結局僕は、真っ赤になった顔のまま俯くことしかできなかった。
その時また天馬くんが呟く。
「ありゃ、また縮こまっちゃった」
「か、からかわないでよ…天馬くん」
「ふっ…でも水瀬はさ、もっと笑えばいいじゃん。そしたらみんな仲良くなれるだろうし」
そのセリフが胸の奥に突き刺さった。
「……っ」
その言葉は胸の奥の何かを小さく揺さぶり
新しい感情が芽吹く気配を運んできた。
僕は顔を上げることができず
ただ小さく「……うん」と頷くだけで精一杯だった。
教室のざわめきの中
朝のHR開始のチャイムが遠くで鳴る。
そのとき───
廊下からバタバタと足音が響いてきた。
「げっ!」
天馬くんが眉間に皺を寄せる。
足音の主は担任の先生だ。
すでに教室に入っていて
「HR始めまーす。ほら、突っ立ってないで!さっさと席に着きなさい」と促している。
「ちぇっ…時間経つの早すぎ」
「ロシアンキャンディーの続きは休み時間にやろーぜ!」
「お前らまだやる気かよ」
須藤くんが慌てて箱を片付ける一方で、加賀くんは淡々と机上の荷物を整えはじめる。
僕も彼らに倣って席に戻ろうとするが
その瞬間
「水瀬」
振り返ると、天馬くんがこちらをまっすぐ見ていた。
「あのさ」
「?」
#シリアス