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「守りたい」


定時になったと気づいたのは、オフィスの中の空気が動き出したからだ。

パソコンから顔をあげ、時計を見ると、午後6時をすこし過ぎている。

ファイルを保存し、簡単にデスクまわりを片付けた後、スマホを手に取った。

今日の昼休み、 紀坂(きさか)のサイン会はどうだったか気になって、メッセージを送っていた。

返事が来ていないかな、とスマホを見ると、通知がある。

“会いたい。

仕事が終わったら連絡して”

まさかそんな内容だと思わなかったから、読んだ瞬間、頬が熱くなるのがはっきりわかった。

だれにも見られていないのに、そわそわして落ち着かない。

スマホを持ったまま「お疲れさまです」とまわりに声をかけ、私は急ぎ足でオフィスを出た。

ビルのエントランスを抜けても、さっき見たメッセージの文章が頭を踊るように回っている。

(単純だな、私)

心が弾む。

仕事終***********

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