「現実で、夢の中で」
(え……)
私はさっき聞こえた声に意識を澄ませる。
それは…… 日比野(ひびの)に渡さない、ということだろうか。
渡すもなにも、私はもう日比野とは無関係だけど、そんな言葉が出るのなら、やっぱりふたりの間に何かあったんじゃ、と心配になってくる。
その時、 紀坂(きさか)が腕の力をゆるめ、私を覗き込むようにして見つめた。
「今日は泊まれる?」
私を映す瞳は、優しいけど、そうあってほしいという期待がこめられていた。
「あ……はい」
今日は金曜日で、明日も特に予定はない。
ここへ来ると決めた時点で、泊まることも想定されていたから、多少恥ずかしく思いつつ頷いた。
はにかむ私に、紀坂はよかった、といったふうに微笑み返す。
「お風呂でも入ってくる?」
「いいですか?」
クーラーで汗が引いたとはいえ、べたべたしている体を洗い流したい気持ちは大きい。*************
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