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俺の後ろを歩く音星もそう感じたようで、音星も暗い洞窟の元来たところを見つめていた。人魂は俺たちに寄ってきているようで、そのために、すでに歩いたところは、真っ暗だった。
ぞわりぞわり、ぞわり、ぞわり。不快でとても嫌な感じが増してきて、それと同時に、元来たところから得体の知れない何かが迫って来た。
「音星! 逃げるぞ!」
「ええ!」
俺と音星はあまりの不快さから、早歩きから、ダッシュになった。暗闇の洞窟内に俺と音星の走る足音が反響している。それでも、得体の知れないものの不快感が、胸一杯に膨らんできていた。
前方に、薄暗い井戸があった。
どうやら、ここが第三層の入り口らしかった。
井戸の底から恐ろしい大音量の擦り切れる音や押し潰す音などがしている。
衆合地獄への入り口! やっと、見つけた!
「ふうっ……走り回ったりで、だいぶ疲れましたよね。ここから第三層へ行けるみたいですので、ここで一旦、八天街へ戻りましょう」
「ああ……あの魑魅魍魎まで八天街へ来りしないかな?」
「大丈夫ですよ。この鏡に写らなければ」
「お、おう」
ぞわぞわとする洞窟の暗闇の中から音星の手鏡を見つめていると、しばらくして、昼時のカンカン照りのロータリーに俺たちは立っていた。車のクラクションの音と共に街の喧騒が押し寄せてくる。
「うん? 腹減ってきたな……昼飯、昼飯っと……」
「え? あんなに食べたのに? 火端さん。それだと、ちょっと、食べ過ぎのような気がします……」
俺はそこで、すぐ近くに大通りから裏通りにある民宿へ向かう途中でコンビニを見つけた。黒縄地獄が暑すぎたので、アイスもいいかなと思った。
「それじゃあ、あそこのコンビニでアイスでも買おうかな?」
「ええ、それはいいですね。私も暑さには滅入っていました」
行き交う人々もどこか忙しない朝の6時頃。大通りを少し歩くと、コンビニへと入る。自動ドア付近にあるアイスボックスからペパーミントを取り出した。音星はストロベリーだ。この時間なので、店内は通勤途中のサラリーマンが多かった。
レジを済ませた後で、音星と相談して民宿で少し休憩することになった。
休憩が終わったら、今日のうちに衆合地獄まで行こうということになった。
「ふー、生き返るぜ」
「駄目ですよ、火端さん。歩きながら食べちゃ」
にゃーー。
「あ、ワルいな。でも、もう封を開けちゃったよ」
「……」
にゃーー。
……
「うん? どこから聞こえるんだ? 猫の鳴き声??」
「?? 確かに、さっきから聞こえますねえ」
裏通りに差し掛かるところの交差点近くに、猫の鳴き声がしたペットショップがあった。そのペットショップは、多種多様な猫が店の外へと溢れ出している。黄色のペンキで塗り潰されたその建物は、猫屋と書いてある小さな看板が出入り口に立っていた。そこへ、俺たちの民宿にいる古葉さんが、ヨレヨレのポロシャツ姿でだるそうに店内を覗いていた。
「あ、古葉さん……」
「あら。今頃、出勤なんですね。古葉さんは、あそこの猫屋で働いているんだそうです。火端さんはご存知でしたか? 古葉さんって、大の猫好きなんだそうですよ」
「……うん?」
俺が怪訝に見ていると、「よし!」っと、掛け声と共に古葉さんが意を決して猫屋に入った……。
途端に……。
「ニャーー!! ニャー!」
「ニャー!」
「ニャニャー!!」
「だー! うるせーーー!!」
猫屋の猫たちが一斉に鳴き出し、古葉さんの大絶叫が木霊した。