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「お待たせ…あっ…紺野くん…‥」
僕の前に現れたのは、マスクをしているのでハッキリとはわからないが、年齢が20代くらいの女性だった。
それに、素顔は確認できないが、顔の輪郭から絶対美人に間違いないと推測できた。
「どっ‥どうしたの2人で? もしかして付き合ってるの? じょ‥冗談よ」
「・・・・・」
亜季ちゃんは遠藤さんの質問に対し、黙ったまま何も答えなかった。
彼氏って答えれば良いのに…。
というより、むしろ言って欲しかった。
「私だって…言いたいよ…‥」
亜季ちゃんは消え入りそうな声で何かを呟いた後、僕をジッと見ていた。
「私は遠藤美咲と言います。紺野くん…ですよね?」
「はい、そうです。僕は、紺野瑛太といいます。葵さんのクラスメイトです。でも、よく僕が紺野だってわかりましたね?」
「だって、ずっ‥」
「んっ、んんっ…‥」
亜季ちゃんは、遠藤さんが何か言おうとするのを咳払いをして遮った。
「まっ‥前に葵ちゃんから聞いていたから…‥」
「そうなんですか…覚えてもらっているなんて何か嬉しいです」
って言うか、この人が遠藤さん?
亜季ちゃんはお婆ちゃんみたいな人って言ってたのに…。
「紺野くん、とりあえず入って」
そして僕は、遠藤さんに半ば強引に家の中に通された。
玄関に上がり、6~8mある廊下を抜けると30畳近くある洋風のリビングに通され、ソファーに座らされた。
何もかもが高級感溢れる物ばかりで、あまり居心地の良いものではなかった。
「遠藤さんは、10年近く亜季ちゃんの家で家政婦をされてるって聞きましたけど?」
「そんなに経つかな?」
「経つでしょ。私が小学3年の時から一緒にいるんだから。ちゃんと覚えててよ」
「亜季ちゃんさっき、遠藤さんてお婆ちゃんみたいって言ってなかったっけ?」
遠藤さんを見ながら小声で亜季ちゃんに向かってそう言うと、亜季ちゃんはイタズラっぽく笑っていた。
「またそんな事言ってたの? 紺野くん、ごめんね。私の外見じゃなくて、態度と言うか仕草振るまいが年寄りくさいからお婆ちゃんって言ってるのよ」
聞かれていた…‥。
「それだけじゃないよ。いつも一緒にいてくれて、色々面倒見てくれるし、わがままも聞いてくれるんだもん。お母さんってより、お婆ちゃんでしょ」
亜季ちゃんは遠藤さんの腕にしがみつき、ベッタリくっつくと子供のように甘えていた。
そんな亜季ちゃんの態度と言葉から、亜季ちゃんが遠藤さんを心の底から好きなのが嫌というほど伝わってきた。