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〖グレーゾーン〗
第四話
〔 青空視点 〕
なんか、昨日よりは少しだけ楽だった。
グレー。
白でも黒でもない。
…それで、いいって言われた気がする。
今日は、返事も模写も、できる。
たぶん。
「ぉ……、おはよ、ですっ」
校門にいた先生。
僕、ちゃんと挨拶できた。
すごい…?
えらい…?
…ほめて、くれる?
〈おぉ、おはよう〉
…あれ?
僕、ちゃんとできたのに。
もやもやしてたら
いつのまにか教室の真ん中。
どうやって歩いてきたんだっけ…
〈…宿題は?〉
「ぁ…っ、ん!」
自信満々に出したプリントは、
タイトルが書かれて、沢山の色が交わってる。
〈…はぁ〉
〈青空、宿題は落書き用紙じゃないんだ〉
でも、でもっ。
隣の子、色いっぱいだった。
…僕も、
あれしたかっただけなのに。
〈…席に戻りなさい〉
返事すら、できなかった。
声の出し方が、わかんなくなった。
…今日は、ちゃんとやろうと思った。
昨日、言われたから。
…なのに、できない。
なんで…僕はできないの。
〈…青空〉
〈あそこの先生と、話できるか?〉
指の先に、知らない大人。
誰だろう。
…話、やだ。
でも、話できたら、ほめてもらえるかも…
「んっ…」
一歩ずつ、素早く。
でも警戒して。
〈…お母さんと一緒に、先生と話そう〉
「…ぉかあさん…?」
〈そう、学校まで来てくれたんだよ〉
…呼んでない。
僕、お母さん頼んでない。
…昨日、病院のこと、母さんに話したから?
椅子に座る。
飛び交う会話はわかんなかった。
お母さんの隣にいるってだけで、消えてしまいたいほど嫌だ。
…僕、暴れない。
そしたら、ほめてくれる…よね。
〈グレーなんですよね?〉
びくっとした。
なんで、知ってるの。
〈まぁ、できてるところもありますし〉
〈大丈夫かと思いますが…〉
…昨日の“だいじょうぶ”と、同じじゃない。
胸が、キュッと縮む。
手も、ひそかに震えてる。
〈そんなに深刻じゃないですよね〉
〈もっと大変な子もいますから〉
聞こえないふりをした。
…僕、やっぱりだめなんだ。
やらなきゃ、とは思う。
でも、なんでやるんだっけ。
理由が、ふっと消えた。
…わからなくて、
動けなくて、
話せなくて、
…僕、本当に頑張れてないのかも。
気づいたら、階段の踊り場にいた。
どうやってここまで来たんだっけ。
上から、何かが落ちてきた。
頭に、ぽすっと当たった。
消しゴム、だった。
「…あ」
見上げたら、階段の上に誰かいた。
目が合った。
逸らされなかった。
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