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教室の隅、スクールカーストの上にも下にも居ない、「平凡な学生」という呼び名が相応しいであろう女子生徒達が、会話を弾ませている。


「え、やばいよね…まじ尊い」

「それな!まじ、愛葉も推した方がいいって…人生変わるよ?」


私こと、平田 愛葉(ひらた いとは)の席を囲むようにして、「演説」を繰り広げる友人。

緋色(ひいろ)と一歌(いちか)だ。


「……」

「…愛葉?」


二人の談笑は、右から左へ流れていく。

友人の並べるどんな言葉も、笑い声も、友達の姿さえも、もはや彼女の眼中にはなかった。

そんな彼女の視線の先は、愛しの彼。


春先に彗星の如く現れた転校生。私含め、たくさんの女子の心をいとも簡単に奪っていった男の子だ。

噂によると彼のファンクラブまでできているらしい。なんだよファンクラブって、意味がわからない。


彼はと言うと、机に肘をついて、友達と談笑しているようだ。

明るく茶色がかった髪は、教室に差し込む光を浴びてキラキラと輝いている。

口元を隠し。眉を下げて笑う姿がなんとも可愛らしい。


世間では「推し活」とやらが流行っているらしいが、二次元、ましてや2.5次元の虚像など、彼の足元にも及ばない。

「人生変わる」だの宗教くさい言葉をいくら並べようと、彼に奪われた私の心がペラペラな液晶外面などに移る事はない。


ぼんやりと彼を見つめる私の視線を指で辿り、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた緋色は、一歌に耳打ちする。


「あ、わかった…烏田(うだ)くんだよ…」

「…え、マジじゃん!」


キャー、と黄色い悲鳴が上がる。

肩を掴み、ブンブンと揺らして質問攻め。

「え、どうなの?最近話した?」

「アプローチしてる?さっさと告らないと誰かに取られちゃうよー?」


わぁすごい…これフラッシュのカメラとマイクがあれば私超有名人じゃん。

記者会見的な。


「告ってないし、話してない。」

「うーわ、つまらん」

「ないわー、愛葉ちゃん、マジないわ」


私がきっぱりと言い切ってしまうと、わざとらしく落ち込んで見せる二人。

見たか、これが人の恋を見世物にして楽しむ人間の図だ。


「話しかけに行きなよぉー」

「そうだそうだー!」


何も言わず、二人を睨む。

これ以上イジるんじゃない、と目で伝える。


「わぁ、目つき悪…こりゃあ、愛しの王子様も振り向かないわ」

「同感、猫百匹被らないと無理無理…ガラスの靴逃げていくよ?恋するお姫様?」

「…お喋りな愚民よお黙り。」


「「はーい、女王陛下」」


第三者から見て、私達の関係がどう映るかはわからない。

同調圧力による独占国家?それとも根暗な陰キャをいじめる陽キャ二人?

どれも素晴らしい観点だね、全部間違ってる。

これが私達の「じゃれ愛」。誤解を招かないように、そう言っておく。


閑話休題


「それじゃあ行こうか」と告げて、教科書を抱えて、教室を飛び出す。

初夏にふさわしい蒸し暑さが、体を包む。

汗で張り付いたスカートを手で整えながら、廊下を並んで歩く。

私達と同じタイミングで教室を出た、想い人とその友人。


遠ざかる彼の背中を眺めながら、私は目を細めた。

そして彼女は空に焦がれた

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