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「大人になったら結婚しようね!」
ピピピ…ピピピ…
アラームが寝ぼけた耳から脳へ突き刺さる。外では穏やかな鳥の鳴き声、家の中では散らばった酒の空き缶とタバコの吸殻。頭が痛い…二日酔いだ。痛みに顔を歪めながら先程の夢を思い出す。幼い少年が発したあの言葉。…懐かしい。俺も小さい頃は純粋で無邪気な子供だったため、約束事が好きだった。ありきたりな結婚の約束。今思い返すと、あの少年は俺、つまり同性に告白した、という訳だ。俺の記憶通りであれば、あの少年は…5歳くらい俺より年下だった気がする。今だったら17歳…か。
計算の早い奴だったら今の俺は21歳ってことに気づくだろう。21歳でこんな酒飲んでタバコ吸ってるのか、と自分で思うと、心が痛くなってくる。勿論無職だ。
…腹が減った。こんな俺でも死にたくは無い。久しぶりに食い物でも買いに外出するか。そう思って俺は軽く髪を梳かして服装を整えサンダルを履く。誰もいない部屋に「いってきます。」という一言を添えてからドアを開け、外に出る。久しぶりに日光を浴びたからか、目が慣れずとても眩しい。ボロボロなマンションの階段を降りて、コンビニへ向かって歩く。食べ物を買う、と自分に言い聞かせながらコンビニに入り、適当に弁当を選びレジへ向かう。店員の後ろに並んだタバコをチラッと見て、結局タバコを購入する。内心自分に怒りを覚えるが、吸ったら忘れてしまうのだろう。購入した弁当とタバコを持ってコンビニを出ようとする。
すると、突然後ろから声をかけられる。俺は万引きなんかしてないぞ…などと内心焦りながら振り向く。先程の店員だ。さっきは気づかなかったが…かなりの美形だ。なぜコンビニで店員なんてしてるのか、モデルでも出来そうなぐらいの美形に声をかけられて少し恐怖を覚える。
「なんですか…?」
しっかりと笑顔を作り、疑問を問いかける。
??「慧君…だよね、?」
美形の男から自分の名前が出たことに驚愕する。どこかで会ったか?いや、こんな顔は見た事がない。
S「俺…俺、颯太だよ。覚えてない…?」
颯太…?聞いたことのある名前だな。なんだなんだ、と困惑していると、また言葉を発する。
S「昔約束したじゃん…結婚しようって」
K「結婚…?…あ。あの時のか!」
S「そうだよ…ずっと探してたのに、引っ越しちゃったじゃないか。」
今朝見た夢の幼い少年がこんな美形に成長してると思ってもいなかったから、俺は心底驚いた。
K「結婚の約束はしたけど…俺は男だぞ。」
S「それがどうしたの?慧君は慧君じゃないか。俺の愛しい慧君。やっと会えた。 」
…結構ヤバい方向に成長してしまったらしい。俺は男より女Loveな方なわけだが…この状況をどう回避するか。答えは簡単。逃げる、だ。
俺は素早く背を向けて歩き出す。…希望は無いのか。すぐに手首を掴まれ腰を抱かれた。
K「颯太は今仕事中だろ?こんなお先真っ暗な男に話しかけてないで仕事に集中した方がいいぞ。」
S「お先真っ暗…?ふーん?」
突然颯太がニヤッと笑ったかと思うと、視界が高くなる。あぁ…抱き上げられてる、一瞬で理解する。
K「…颯太。下ろしてくれ。」
S「え?ヤダよ。せっかく見つけたし、お先真っ暗なんでしょ?なら俺の役に立ってよ。衣住食負担するよ。」
こんな良い条件の仕事、拒否する理由が無い。俺は間も許さず返事をしてしまう。この選択が凶と出るか吉と出るか…不安だ。