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ある日の午後。アトリエには柔らかな陽射しが差し込んでいた。
仏「……んー、よし。いい感じに仕上がってきた、かも」
パレットを持ち直し、筆先を調整しながらキャンバスに向かう。
しかし、後ろに手を伸ばして椅子に腰掛けようとした瞬間——
仏「…………あれ?」
椅子には、ふわりと丸くなった毛玉のような存在が。
白くてふわふわなスコティッシュフォールド、ミル。
仏「……そこ、僕の椅子なんだけど……」
ミルは一瞥したのち、大きくあくびをして、くるりと体勢を変えて再び眠りの体勢へ。
仏「ちょ、ちょっとだけどいてくれたら……いや……可愛いな……くそ……」
どうしても起こせなかった。
しかたなくフランスは、そのまま立ったまま絵を描き続ける。
……数時間後。
英「フランス、夕飯できましたよ。って、また立って描いてたんですか……?」
仏「……うん。椅子、取られてたから……ミルに」
英「……ああ」
食卓に座るフランスの動きがどこかぎこちない。
背筋を伸ばすたびに「いてて……」と小さく呻き、太ももをさすっている。
英「……まさかと思いますけど、ずっと立ちっぱなしだったんですか?」
仏「うん……なんか、可愛くて、どかせなくてさ……」
英「それで筋肉痛になってるんですね……馬鹿じゃないですか……」
仏「……馬鹿だよ、僕……ミルの寝顔には勝てなかった……」
英「……まったく……」
呆れたように言いながらも、イギリスはそっとフランスの足を撫でるようにマッサージしはじめる。
仏「え……なに、してくれんの?」
英「筋肉痛で唸ってられても面倒ですし……仕方なく、です」
仏「……うれし……ありがと、イギリス……」
英「……撫でるだけですからね? 変な期待はしないでください」
そう言いつつも、イギリスの手の動きはどこか丁寧で、力加減も優しい。
仏「……こんなに優しくされるなら、明日も立って描いちゃおっかな」
英「調子に乗らないでください」
それでも顔はほんの少し赤くて、照れたように目をそらしていた。
ソファでは、熟睡中のミルが小さく丸まり、ごろごろと喉を鳴らしている。
三人の夜は、今日も平和に更けていく。