テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

休日の朝。春のやわらかな陽射しがアトリエの窓から差し込んでいる。

フランスは、久しぶりにキャンバスを新調していた。

その中央に描かれつつあるのは、まるくて白いふわふわの……そう、スコティッシュフォールドのミル。

仏「……うん、そうそう。ミルはちょっと上向いて……そのままじっと……」

パレットを持ち、少し離れた位置で構えるフランス。

床に毛布を敷き、その上でくつろぐミルは、見事なまでのポージング。前足を揃え、ほんの少し首を傾げたその姿は、どこか王族のような気品すら漂っていた。

英「……本当に、モデルに向いてると思いますか、それ」

仏「いや、見てよ?この気高いポーズ。めちゃくちゃいい構図でしょ」

英「……まあ、今は……ですけど……」

その言葉が終わるのを待たず、ミルはふわあっとあくびをして、ゆっくりとごろんと横倒れになる。

仏「えっ……ちょ、ちょっと、ミルさん……⁉」

英「……言わんこっちゃないですね」

ミルはそのまま足を伸ばし、まどろみの世界へ。

先ほどの姿勢は一瞬の奇跡だったらしい。

仏「も〜〜〜〜……ああ、でもかわいい……くっそ、描く……寝姿でも描く……」

あきらめきれず、筆を走らせるフランス。

描いては消し、角度を変え、毛並みの柔らかさを追う。

英「……本当に器用ですね、あんた」

仏「ふふん。僕の愛情は、筆先に乗るタイプだからね」

英「はあ。……じゃあ、ミルが寝返りうったときのために、横向きの構図も用意しておいた方がいいですよ

仏「……うん、それはマジでそうかも……」

案の定、十数分後にはミルがごそごそと寝返りをうち、こんどはおなかを見せて完全に無防備な格好に。

キャンバスの中のミルとはすでに別猫レベルである。

仏「ちょっとミルさん!? 撮影中ですよ!? そのお腹、さすがに警戒心なさすぎない!?」

英「……もう、その構図で描いた方が早いと思いますけど」

仏「うん……わかってる……でも見てるとね、描くより、なでたくなっちゃうんだよね」

英「それ、画家としてどうなんですか……」

そう言いながら、イギリスも隣に腰を下ろし、ぽすっとミルの頭を撫でた。

ぴくりと耳が動いて、のどの奥から「ぐるる……」という満足げな音が聞こえてくる。

仏「……ねえ、イギリス」

英「なんですか」

仏「この子がうちに来てくれて、本当に良かったね」

英「……はい。心から、そう思います」

キャンバスにはまだ完成しないラフな線。

けれど、部屋に広がるあたたかな空気は、それだけで一枚の絵のようだった。

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚