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休日の朝。春のやわらかな陽射しがアトリエの窓から差し込んでいる。

フランスは、久しぶりにキャンバスを新調していた。

その中央に描かれつつあるのは、まるくて白いふわふわの……そう、スコティッシュフォールドのミル。

仏「……うん、そうそう。ミルはちょっと上向いて……そのままじっと……」

パレットを持ち、少し離れた位置で構えるフランス。

床に毛布を敷き、その上でくつろぐミルは、見事なまでのポージング。前足を揃え、ほんの少し首を傾げたその姿は、どこか王族のような気品すら漂っていた。

英「……本当に、モデルに向いてると思いますか、それ」

仏「いや、見てよ?この気高いポーズ。めちゃくちゃいい構図でしょ」

英「……まあ、今は……ですけど……」

その言葉が終わるのを待たず、ミルはふわあっとあくびをして、ゆっくりとごろんと横倒れになる。

仏「えっ……ちょ、ちょっと、ミルさん……⁉」

英「……言わんこっちゃないですね」

ミルはそのまま足を伸ばし、まどろみの世界へ。

先ほどの姿勢は一瞬の奇跡だったらしい。

仏「も〜〜〜〜……ああ、でもかわいい……くっそ、描く……寝姿でも描く……」

あきらめきれず、筆を走らせるフランス。

描いては消し、角度を変え、毛並みの柔らかさを追う。

英「……本当に器用ですね、あんた」

仏「ふふん。僕の愛情は、筆先に乗るタイプだからね」

英「はあ。……じゃあ、ミルが寝返りうったときのために、横向きの構図も用意しておいた方がいいですよ

仏「……うん、それはマジでそうかも……」

案の定、十数分後にはミルがごそごそと寝返りをうち、こんどはおなかを見せて完全に無防備な格好に。

キャンバスの中のミルとはすでに別猫レベルである。

仏「ちょっとミルさん!? 撮影中ですよ!? そのお腹、さすがに警戒心なさすぎない!?」

英「……もう、その構図で描いた方が早いと思いますけど」

仏「うん……わかってる……でも見てるとね、描くより、なでたくなっちゃうんだよね」

英「それ、画家としてどうなんですか……」

そう言いながら、イギリスも隣に腰を下ろし、ぽすっとミルの頭を撫でた。

ぴくりと耳が動いて、のどの奥から「ぐるる……」という満足げな音が聞こえてくる。

仏「……ねえ、イギリス」

英「なんですか」

仏「この子がうちに来てくれて、本当に良かったね」

英「……はい。心から、そう思います」

キャンバスにはまだ完成しないラフな線。

けれど、部屋に広がるあたたかな空気は、それだけで一枚の絵のようだった。

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