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先生は一人の生徒を指した。

「この文章、書き方悪いです」と彼は答えた。

俺は、その唐突な言葉に耳を疑った。

「具体的に、どのように?」と先生は言った。

「抽象的な言葉ばかり使っていて、読者に意味が伝わりません」

「例えば?」

「筆者のいう『論理的科学技術』が何なのか、例が一つも出ていません。これだけじゃあ、何を意味しているのか読者にきちんと伝わりません。筆者の独りよがりな文章になってます」

次に、別な生徒が発言した。

「表現に無駄が多いです。言葉が重複してて、文章効率が悪いんです」

「具体例を出してみてくれるか」

「全体的に言えるんですが、例えば一ページ目下の段真中あたり『ゴバル大統領個人の宗教理念が元になる、ゴバル大統領の『誤謬なき神の判断』による、ゴバル大統領の宗教科学的見地を大衆は黙認できない』のところです。『ゴバル大統領』のあとの二回はカットしていいでしょう。この作者、もっと文章を勉強した方がいいと思います」

確か、国語の授業のはずだよな。

「他には」

また別な生徒が指された。

「この人、自分のエゴのために書いてるんですかね? そうとしか思えないんですけど」

「なんでそう思う」

「二ページ目上の段三十二行目『思いやりのない他者隔離時代との共時走行』という表現は、なにもわざわざこんな書き方しなくても『人のことを思いやらない人が増えていて、そのまま時間だけ過ぎていく』って書けばいいのに。こんな言葉の羅列では、かえって意味があいまいになって、読者には伝わりませんよ」

壁の向こうでは、それでも読者が必死に分かろうとするぞ。

「ようし。他には」

また別な生徒が指された。

「論旨がバラバラです。この人は、科学が世界を救うと言いたいのか、世界を壊していると言いたいのか、その両方とも言いたいのか、まるではっきりしません」

俺は午前中、これが分かんなくてゲンコツまでもらったぞ。

「しかもこれだけ色々書いた挙句、『現代社会を救済の道へ導くためには』、結局『一人ひとりの自覚が大切だろう』の結論はないですよ! これじゃ、何の解決策も示してないじゃないですか。なら、そもそもこの人は何を伝えるためにこれを書いたんでしょう」

「たわごと?」誰かが言った。教室から笑いが漏れた。

「結局、自分でも書いてる主題についてあいまいなんだろね」先生は、あっさりとそう言ってのけた。

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