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「これから、対策会議をはじめます」
私は寮生が確実に寝ている午前2時に、兄ルイスのアカデミーに用意されたVIPルームで兄ルイス、ルイ王子、カルロスを集合させた。
「好きだ、こんな事許されないって分かっているけれど、もう抑えきれないんだ」
兄ルイスが唐突に私を抱きしめてきた。
私の予想通りプロローグが終わりメインストーリーが明日からはじまる可能性が高い。
兄ルイスにかかっているイザベラが好きだという強制力が強くなっているので、対策会議という場で場違いの行動をとってしまっている。
私はゆっくりと兄ルイスを引き剥がした。
「ルイス王太子殿下、かなり苦しい状態のようですね。ここまで衝動を抑えられないのは、かなり危険です。人前で弟の婚約者に手を出したら一発で王太子殿下と私の評判が落ちます。衝動が抑えられないのであれば、入学式は欠席してください。どうしても抱きつきたい時は、ルイ王子をイザベラだと思って抱きついてください。それならば、周囲は微笑ましく見てくれるかも知れません。私はヒロインのポジションが弟の婚約者イザベラであることが、流石に引っかかっています。そのため、新入生の寮生の中でヒロインになり得そうな子の行動観察をしていたのですが王太子殿下に憧れる子はいませんでした。そして、現在ヒロイン候補である私イザベラも王太子殿下への恋心を募らせておりません。これは、女は選ぶ側ではなく、いつでも選ばれる側だと考える人間が作った世界の可能性があります。なのでヒロインの気持ちに強制力はかからず、選ぶ側の王太子殿下だけに強制力がかかるのです。王太子殿下、7歳から会っていなくても必ずフローラ様を選ぶと毎日心に言い聞かせてください」
兄ルイスは次期国王とは思えない危険な色気を振り撒く男になっていた。
カルロスが以前彼を世界中の女を抱いてきたようなルックスと言っていたが、確かに14歳という若さでそのレベルに仕上がっている。
貴族令嬢は自分達が品位を求められる教育を受けているだけあって、正統派の王子様が好きだった。
だから、決して会えない王子様レナード・アーデン侯爵は彼女達の憧れの的だ。
彼女達が他に憧れるとしたら、自国の正統派王子のルイ王子だ。
しかし、婚約者の私の前でルイ王子への憧れを口にする女の子は存在しなかった。
兄ルイスは不躾な態度を7年も公の場で見せてしまっているアウトロー王子様だ。
彼に憧れる女子を見つけられれば、その子がヒロインだと思うのだが今のところ見当たらない。
「珠子様、僕との接触を最低でも1年は断つとおっしゃっていましたが、婚約者だから接触しても僕は問題ないと思います」
ルイ王子は声の出し方も、視線も、仕草も優雅で相変わらず私の理想の王子様だ。
彼と接触しない理由は、女子からの嫉妬をかうからだけではない。
「王太子殿下とフローラ様が7歳から会っていないのです。それなのに、私とルイ王子が仲良くしていたらフローラ様はどう思われるでしょうか? 婚約者に放ってかれていると感じているだろう、フローラ様はとても寂しい気持ちになると思います。私はイザベラがそういったところも気を遣える子になったことを、フローラ様にアピールしたいのです。王太子殿下が彼女に会えないのは、その粗暴な口調のせいですね。フローラ様は殿下に会いに来てくれなくても、次期王妃としての教育に真面目に取り組み貴族令嬢の指導を続けています。フローラ様の隠された本当の価値がわかりますね。王太子殿下、毎晩のようにフローラ様を選ぶと唱えて眠りについてください。ルイ王子、私があなたを愛していて、いつだって会いたいと思っていることだけは忘れないでください」
私の言葉にルイ王子が少し照れたような顔をして優しく微笑む。
彼のことが好きすぎる、39年手が届かなかった理想の王子様がそこにいる。