にじサントスの街中、暗がりの路地の中で声が聞こえてくる。
「小柳?」
低い声だった、でも呼んでくれたのはあの人じゃなかった。
探してるあの人じゃ
「……凪さん」
「お疲れ様です、なんでお前そんなテンション低い?大丈夫そう?」
「いやまぁ、ちょっと色々あって」
「あー、警察は大変そうだな」
「凪さんTwixとか見てないの」
「Twix?そう言えばあんまり見てないな、何かあったの」
「ニュース見てニュース、もうそれで分かるから全部」
「ニュース?ニュースか」
スマートフォンを使ってニュースアプリを開いているであろう凪さんの表情が変わったのが見えた。
止められなかった、俺の声は届かなかった。
あの時ちゃんと話を聞いていれば、今あの人達は隣に居てくれたのだろうか。
あの時、信頼を勝ち取れていたら。
温かい手の平が頭を撫でてくる。
「なに、なにしてんすか急に」
「いや、特にはないけど」
お前、頑張ってるよ
その言葉がすとんと心の中に入っていくような、そんな感じがした。
何も言わずにただ頭を撫でる凪さんに、文句なんて言えなかった。
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