テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#snjn
のりもちさん
9,016
放課後。
教室に残っているのは、仁人と舜太の二人だけだった。
窓の外は、夕焼けでオレンジ色に染まっている。
❤️「仁ちゃん、帰らへんの?」
💛「……もうちょっと。」
机の上には、まだ終わっていない課題。
けれど仁人は、さっきから同じページを開いたままだった。
舜太はそれに気づいていた。
❤️「さっきからそこ、ずっと見てるやん。」
💛「……見てない。」
❤️「見てる。」
💛「……うるさい。」
仁人は顔を伏せる。
本当は、課題なんてとっくに終わっていた。
ただ――
舜太ともう少し一緒にいたかった。
それだけ。
でも、そんなことを素直に言えるわけがない。
❤️「じゃあ、俺も残ろ。」
💛「……なんで?」
❤️「仁ちゃんが帰らへんから。」
💛「別に、先帰っていいのに。」
❤️「嫌。」
即答だった。
仁人が顔を上げる。
💛「……なんで。」
❤️「なんとなく。」
そう言って、舜太は笑った。
仁人はまた視線を逸らす。
💛「……変なの。」
❤️「仁ちゃんもね。」
💛「俺は普通。」
❤️「じゃあ、なんで耳赤いん?」
💛「……っ!」
仁人は慌てて耳を手で隠した。
💛「赤くない。」
❤️「赤いで。」
💛「夕焼け。」
❤️「教室の中まで?」
💛「……うるさい。」
舜太が楽しそうに笑う。
その笑い声を聞いて、仁人も小さく笑った。
しばらくして、二人は教室を出た。
廊下を歩いていると、舜太がふと立ち止まる。
❤️「仁ちゃん。」
💛「なに?」
❤️「手。」
舜太が手を差し出した。
仁人はその手を見つめる。
💛「……何。」
❤️「つなぐ?」
💛「……なんで?」
❤️「今日はそういう気分。」
仁人は少し迷ってから、そっと手を重ねた。
触れた瞬間、二人とも少しだけ黙る。
💛「……。」
❤️「……。」
仁人の顔が、また少し赤くなる。
❤️「仁ちゃん。」
💛「なに。」
❤️「嬉しい?」
💛「……普通。」
❤️「そっか。」
舜太は笑った。
でも、つないだ手は離さない。
仁人も離さない。
校門を出て、夕暮れの道を歩く。
しばらくして、舜太が小さく呟いた。
❤️「俺、仁ちゃんの考えてること、ちょっと分かるかもしれん。」
💛「……分かるわけない。」
❤️「じゃあ、当ててみる。」
💛「……何を?」
❤️「もう少し、このまま歩きたい。」
仁人の足が止まった。
💛「……。」
❤️「違った?」
仁人は俯いたまま、つないだ手にほんの少し力を込める。
💛「……違わない。」
舜太が嬉しそうに笑う。
❤️「やっぱり。」
💛「……ずるい。」
❤️「何が?」
💛「俺が言えないこと、勝手に分かるから。」
❤️「じゃあ、俺が言うよ。」
💛「……何を?」
舜太は仁人の隣で、優しく笑った。
❤️「俺も、もう少し一緒にいたい。」
仁人は答えなかった。
ただ、つないだ手をもう一度ぎゅっと握った。
それが返事だった。
言葉にしなくても。
目を合わせなくても。
なぜか、ちゃんと伝わってしまう。
二人だけの、不思議な関係。
それが始まったばかりの、夕暮れだった。
コメント
1件
ちゃちゃゆさん、第1話拝読しました。 放課後の教室に二人だけ、という設定からして胸がきゅっとなりました。舜太が「じゃあ、俺も残ろ」って即答するところ、仁人が耳を隠すところ……どちらも本当に可愛くて、思わず頬が緩みました。手をつなぐシーンの、触れた瞬間に二人とも黙る間がたまらないですね。言葉にしなくても伝わる、不思議な関係。夕暮れの雰囲気もぴったりで、続きが気になります🌇