コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
定番組が突き止めた敵の潜伏先は、郊外の廃工場だった。
首都を揺るがす連続襲撃事件──その黒幕、虚筆連盟の一端にようやく手が届く。
江戸川乱歩は、現場に向かうトラックの荷台で足をぶらつかせながら、楽しげに笑っていた。
「ふふん、有栖川君。いよいよボクたちの出番だよ。」
「……この事件、単なる破壊工作じゃない。」
有栖川は資料を睨み、乱歩の軽さにやや呆れ気味だった。
「狙いは明確だ。“権力構造そのものの破壊”──おそらく国家の支配層を書き換えるつもりだ。」
「だから、解く価値があるんだ。」
ふっと笑う乱歩の隣に、静かに座っていたのは──ポオ。
「……ボクもいるんだけど。」
ポオが小さく呟く。
「もちろん、ポオ君がいないと始まらないじゃん。」
乱歩は自然にそう言った。
だが、ポオの視線はちらりと有栖川へ。
(でも……最近、乱歩はあの人とばっかり推理してる……)
なんとも言えない小さな嫉妬が、胸に芽生えた。
廃工場に到着すると、織田作之助、尾崎紅葉、坂口安吾、条野採菊、末広鐵腸が迅速に配置につく。
「敵はいる。間違いない。」
安吾が短く言い放つ。
そして霧が、ゆっくりと工場を覆い始めた。
「ようこそ。」
霧の中から、チャールズ・ディケンズ、渡辺淳一、井伏鱒二が現れる。
「君たちが守ろうとする秩序を、私たちは書き換える。」
ディケンズは一冊の本を開くと、工場内の景色が歪んだ。
「……物語を書き換えて、現実を捻じ曲げる異能か。」
有栖川がすぐに分析し、乱歩と並んで立つ。
「じゃあ、有栖川君。ボクと一緒に解こう。」
「──ああ。」
「……ボクも、いるんだけど。」
ポオがそっと呟く。
「もちろん、ポオ君も。一緒に解くに決まってるじゃん。」
ポオは少し拗ねたようにうつむいた。
(でも、最近、乱歩は……)
敵の仕掛けた物語の歪みに対し、ポオの幻影が攪乱し、有栖川が推理で切り込む。
「敵は、“虚構”と“現実”の境界を曖昧にしている。だったら、その“矛盾点”を突くしかない。」
「有栖川君、やっぱり君は賢いねぇ。」
「……ポオも……わかってた。」
ポオの声は小さいが、有能に幻影で敵の動きを封じていく。
三人は、息を合わせて虚筆連盟の物語支配に挑んだ。
だが、その裏で──伊坂幸太郎の因果律が、僅かに、歪み始めていた。
「……嫌な感触だ。」
偶然を操作する彼の異能に、わずかなほころびが生まれる。
それが、後に彼らを追い詰める伏線になるとも知らず──。