テラーノベル
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「……順番に取れ」
マフィオソの声と共に、朝食がテーブルに並べられる。
ベーコン。
スクランブルエッグ。
黒パン。
スープ。
そして何故か山盛りのピクルス。
「リエーレ、またピクルス増えてねぇ?」
「ボスが昨日“嫌いではない”と仰っていたので」
「“好き”じゃねぇじゃん」
カポが突っ込む。
マフィオソはコーヒーを一口飲みながら、
静かに新聞へ目を落としていた。
——その時。
「ボス」
リエーレが自然な動作でフォークを持ち上げる。
「こちら、ちょうど良い焼き加減です」
差し出されたベーコン。
「……ん」
普通に食べるマフィオソ。
数秒の静寂。
カポ、ソル、ラクティーの動きが止まる。
「……は?」
「え?」
「い、今……」
リエーレは平然としている。
「何か?」
「何かじゃねぇ!!!!」
カポが机を叩く。
「なんで自然にあーんしてんだお前!?」
「ボスが拒否されなかったので」
「そういう問題じゃねぇ!!」
ソルもわたわたしている。
「ぼ、ボス……それ、平気なんですか……!?」
「……別に減るものでもない」
「減るだろ!!理性が!!」
カポが叫ぶ。
するとラクティーが目を輝かせた。
「なるほど……朝は“あーんタイム”なんですね!」
「違う」
「違います」
「違うぞ」
「ちがうよぉ!?」
全員から否定されるラクティー。
しかしもう遅い。
「ボス、僕もやります!」
ラクティーがウインナーを突き刺す。
「はい、あー——」
勢い余ってフォークごと突っ込もうとする。
「危ない」
マフィオソ、素手で止める。
「わっ」
「まず人に向ける角度を学べ」
真顔指導。
「すみません……次は刺しません!」
「そこじゃない」
カポが腹抱えて笑ってる。
「ははっ、ラクティー危なすぎんだろ!」
だが次の瞬間。
「……ボス、俺なら上手くできますけど?」
空気が変わる。
カポ、参戦。
サングラスを上げながら、
やたらいい笑顔でパンを差し出す。
「ほら、ちゃんと一口サイズっす」
「……」
マフィオソはじっと見る。
その沈黙に、
カポの喉がごくりと鳴る。
(いけるか……!?)
「……デカい」
「えっ」
「口に入らん」
「そこ!?!?」
リエーレが静かに補足する。
「カポは加減というものを覚えるべきですね」
「うるせぇ!!」
その横で、
ソルがものすごくソワソワしていた。
「……ソル」
「ひゃい!?!?」
名前呼ばれただけで飛び上がる。
「お前は食わないのか」
「え、あ、いや、その……」
手元には小さく切ったオムレツ。
明らかに“誰かに食べさせる用”サイズ。
全員の視線。
「…………」
ソル、顔面真っ赤。
「ち、違っ、これはその、練習というか……!」
「誰の」
「えっ」
「誰に食わせるつもりだった」
マフィオソが静かに聞く。
ソル、完全停止。
「…………ぼ、ボスに……」
消えそうな声。
静寂。
カポが口押さえてる。
ラクティーは「わぁ……」って顔。
リエーレは微笑んでる。
「……来い」
「へっ」
「食わせるんだろう」
「えっ、えっ、えっ」
完全パニックのソル。
震える手でオムレツを差し出す。
「あ、あーん……」
マフィオソ、普通に食べる。
「……美味い」
ソル、爆発。
「〜〜〜〜〜〜ッ!!」
帽子引っ張って机に突っ伏した。
「かわいいかよ」
「可愛いですね」
「可愛いなぁ」
全員一致。
そしてその空気の中、
マフィオソはふと考える。
(……なぜ私が全員に食わせてもらっているんだ)
数秒後。
「……お前たち」
低い声。
全員ピシッと固まる。
「そこまで言うなら——」
マフィオソが立ち上がる。
「平等にしてやる」
「……え?」
数分後。
「ほらカポ、口開けろ」
「あっ、えっ、マジで!?!?」
「あー……」
「お前は犬か」
「ソル」
「ひゃ、ひゃい!」
「こぼすな」
「む、むりぃ……!」
「ラクティー、飲み込んでから喋れ」
「もごもごごめんなさい!」
「リエーレ」
「……これは役得ですね」
「後で予定を倍にするぞ」
「申し訳ありませんでした」
朝のダイニングに響く、
珍しく騒がしい笑い声。
そしてマフィオソは思う。
(……チャンスのカジノより騒がしいな)
だが不思議と、
悪い気分ではなかった。
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