『どぬちゃんはヤバイ』
『どぬヤバイ、多分1番飲ませちゃダメなんじゃない?』
『変わるね、豹変しちゃう』
いやーいつぞやのじゃっぴ達の動画を思い出すなぁ、あれって大袈裟とかではなくマジだったんだなー、と現実逃避する俺をどうやら目の前の俺の彼氏さん(仮)は許してくれないらしい。ねぇーもふくん聞いてるのー?とふにゃふにゃ声でご機嫌そうにしなだれ掛ってくる、楽しそうで何より。さっきまで一緒に晩酌していたテーブルに空っぽになった日本酒の瓶が転がっているのが見えた。アルコール度数15%、今日どぬくさんと選んだ京都で有名らしい日本酒だ。
野郎2人でのケチケチ旅行だったから立地だけにはこだわり、駅から近くて部屋の窓からは趣きのある古都を一望できると口コミの高いビジネスホテルのツイン部屋を予約した。旅行の計画を立てた時、地酒と地元の名物を購入してホテルからの良い景色を見ながら一緒に飲もうと言って楽しみにしてたし、実際に素晴らしい景色を眺めながらの名物も酒も旨くどんどん進んだ、んだけども。
「ねー、もふくん楽しいね」
「うんうんそうですねー」
「おれね、おれ…」
「はいはい何ですかー」
「お守りおそろいうれしい、大切にするね…ずっと持ってたいなぁ」
「そんな大袈裟な」
「なんかあつくない?やっぱぬいじゃお」
「着てくださいねー」
酒が進みすぎちゃったどぬくさんがさっきから暑い暑いと駄々を捏ねてはがばっと和服をはだけさせようとするのを宥めすかして和服の前をきっちり閉じるのを何度も繰り返している。どうしてこうなった。とりあえずこの状態のどぬくさんの対処法を求めようとスマホを取り出してLINEを開く。じゃっぴの名前を見つける前に、目の前に移動していた酔っぱらいによってスマホを取り上げられてしまう。
「あっ、バカ」
「今はおれとの時間でしょ、ちゃんとおれにかまってよ」
「…どぬくさんの事を相談しようとしてんですよ」
それを聞くとどぬくさんはぴたっと止まってこちらを酒で潤んだ目で見つめてくる。おれのこと?と柔い声で聞いてくるから頷くと彼は途端に笑顔になった。
「ええー、おれのこと?えへへ」
「分かったならスマホ返してくださーい」
そう言うと、それはだめーって言うどぬくさんが子供のようで可愛くて笑ってしまった。歳の離れた弟がいたらこんな感じなんだろうか。そんな俺を見てどぬくさんはにこにこ笑いながら俺に身体を預けてくる。
「おれね、もふくんの声すき。声だけじゃなくて顔も性格もメガネも全部すき。2人でりょこう、うれしいんだよ」
本当に勘弁して欲しい。
コメント
4件
あ、好きです
毎回コメントすみません!! ここにきて、酔っ払いが可愛すぎて…!がんばれもふくん!! 毎回理想の2人すぎてキュンキュンしました、心臓がもちません!!