隣にいたい

まだ飲めるー、まだもふくんと話したいーとしつこくしつこくごねるどぬくさんを何とか言いくるめて寝かしつけに成功し、ビール片手にぐったりと窓際のソファーに沈み込んだ。あー疲れた、保育士さんて毎日こんな感じなのかなご苦労様です。こっちは成人男性相手だったけど。

「あー、ほんと良い景色…」

ちびちびとビールを飲みながら京都の街並みを眺め今日のことを振り返ってみるけど、そのほとんどがどぬくさんのことで占められている。

何かおかしくないか、俺とどぬくさんって元々こんな仲良い感じだったっけ？それはこの旅行話が出た時からうっすら思ってたことだけど。

『2人でりょこう、うれしいんだよ』

にこにこ笑顔の酔っぱらいの姿が頭の中にふわふわと浮かんでいる。好き好き言っててまるで熱心な俺のファンのリスナーさんみたいだった。じゃっぴやのあさんの言ってた酒飲むと豹変するってこういう事？

「……………」

はっきり言って面白くない。考えれば考えるほどモヤモヤしてきて一気にビールを煽り、空っぽになった缶をそのまま強めにテーブルに置いた。とりあえず風呂だ風呂、そんで明日の観光に向けてもう一度行きたいところを確認してから俺も早めに寝ようそうしよう。着替えを取りに行くと幸せそうな顔をしてスヤスヤ寝ている酔っぱらいが目について何だか癪に触ったから額に軽く手刀をお見舞いしてやった。

「……ふがっ、」

どぬくさんの間抜けな声に満足して俺は今度こそ風呂場へ足を運ぶことにした。