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「それにしても、新くんと洸くんがお付き合いしてるのにはびっくりしたなぁ」
陸さんが、ケーキを食べながら、まだ座っていない2人を見つめて言う。
「僕もびっくりしたんです。お隣さんに挨拶しにいったら、高校の時にずっとお友達になりたいと思ってた洸くんがいて」
「え!? 新くんと洸くんは知り合いやったって事?」
そんなん全然知らんかったんやけど。新くんが洸くんの事助けたから、自然とくっついたもんやと思い込んでたわ。
「そう、元々俺のストーカー」
淡々とそう言いながら椅子に座り、ケーキのフィルムを外し始めた洸くん。待て待て、兄ちゃん、それは聞き捨てならんぞ。
「え!? なんでそれで付き合う事になるん?」
びっくりしすぎてソファから身を乗り出すと、絶句していた新くんが「冗談ですからね! ただのファンだったんです!」と必死に言い訳している。
「……そりゃまぁ色々と……カッコよかったから」
そしてまた洸くんが淡々と呟く。その言葉にはみんな黙って納得した。新くんは嬉しそうにニヤニヤしてるだけやけど。
「新くん、お店でも人気あるもんね。Barの常連さんはほぼ新くん目当てやから」
「……でも、気づいてないでしょ? この人」
ふふッと頬を緩ませながら、嬉しそうに洸くんが言っている。新くんの天然にもう慣れたのか、モテエピソードを聞いても嫉妬すら抱かんようになってるんやな、洸くんは。
「でもね、そういう見た目だけのカッコ良さだけじゃないねんなぁ。新くんは流れに身を任せるようにカッコええんよ」
洸くんがしみじみと何かを思い返すように語り出す。
「だって、バーテンダーも料理もバイクも、俺と再会するまでに自然と身につけたかっこよさで、俺に好かれようとして作ったもんじゃないから。それにいざとなったら体張って助けてくれて、その上俺の事好きすぎて、浮気なんて絶対せえへん最高の彼氏やねんなぁ」
うわぁ、新くん、突然洸くんカッコええって褒めちぎられすぎて頭抱えてもうてるやん。普段の洸くんは何考えてるか分からん時もあるから、ここまでストレートに口に出すことも珍しいし、周りもびっくりして見守っている。
「確かに、それは最高の彼氏やなぁ」
「そう。俺、秀太にぃと弦っていう、理想の恋人二大巨塔みたいなのと兄弟になってもうたから、結構他の人と比べちゃって。新くんの事好きになるまでは、2人おったら別に一生恋人おらんくてもええかなって思ってた」
ふふッと笑う可愛い笑顔の洸くんを見つめて、俺たち兄弟の目が点になる。
「え!? 洸くん、俺の事そんな風に思ってくれてたん!?」
「確かに。でも、秀太さんは分かりますけど、弦さんは合ってます?」
「おい野中新! お前、今俺と空くんの事敵に回したぞ! なんやったら陸さんもこっち側やぞ!」
弦がシャツの袖を捲り、「いったろか、こら」なんてふざけて息巻いている。ほんで、なんで新くんはそんな楽しそうで嬉しそうなん?でも俺は今感動している。洸くんが俺たちのこと、そんな風に思ってくれてたなんて。
「……新くんが現れてくれてよかった。そうやないと俺、一生洸くんに遠慮して、秀太に好きって伝えられへんままやった」
横でゆっくりケーキを堪能していたもとちゃんがぽつりと呟く。ずっと近くで俺たちを見てきた幼馴染や。そんな気持ちも察してたんやろな。
「でも、こういうのは運命やから。遅かれ早かれ、俺はもとちゃんのこと好きっていつかは気づいてたと思うで?」
精一杯の優しい笑顔で微笑むと、「そうか」と照れたようにもとちゃんはケーキを口に運んだ。
可愛いな、こいつは。なんで俺は今までこの気持ちに気づかんかったんやろう。
「空は? なんで弦くんやったん?」
「お! 陸さん、この流れで来ます!?」
弦が嬉しそうな恥ずかしそうな顔で、空くんと陸さんを見ている。なんや、弦に関してはこう言う話はむず痒い感じがするな。
「なんか……いっつも元気やなあって」
「なぁ! 空くん! 思てたんと違う!!」
弦の必死のツッコミに全員が笑顔になる。結局こいつはこういう役回りの方が合ってんねんな。
「……分かる気がするなぁ。いつも元気で真っ直ぐで嘘のない」
「そう、ほんで、一緒におると確実に楽しいねん。流石兄貴は分かってるな」
蜷川兄弟が目を合わせて笑っている。そうやな、ここにいるみんながそう思ってるわ。
「……この人なら絶対裏切らへんって、信じられるねんなぁ」
洸くんのトドメの一言に全員で頷く。もう弦はさっきの勢いを無くして、泣きそうに、いや、もう泣いて腕で涙を拭っているやん。でもな、俺の事盛大に騙しとったけどな?今空気読んで言わんとったるけど、蜷川家もグルで相当なもんやで?
「……元宮さんは、秀太さんのどんな所が好きなんですか?」
陸さんの口から自分の名前が出た瞬間、一気に心臓が跳ね上がる。もとちゃんは、告白はみんなの前では嫌やって言うてた。今回もお預けかなと思ってたけど。
「……女神様、みたいなところですかね」
「それは流石に褒めすぎやし恥ずかしいぞ、こら」
「えらい口の悪い女神様おるけど」
弦の一言にみんなで大笑いする。もう恥ずかしいから、そのツッコミでこの話終わらせてくれ。
「……大事にしてくれるんですよね、みんなのこと」
その一言に周りが深く頷く。なんや、そんなん好きな人になら当たり前の事で、そう言われてもピンとこうへんねんけど。それでも、みんなの優しい視線に気恥ずかしくて仕方なかった。
でもな、俺、心の中では陸さんの事ボロッカスに言ってたで? 流石にそれを自ら白状する空気じゃないし言えへんけど。