テラーノベル
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その夜は、満月だった。なのに、どこか息苦しかった。
不安という言葉が肌にまとわりつく。
山奥の隠れ家は、静かで平和な時間が流れていた――そう思っていたのは、幻想だった。
ドアの向こうから、ガチャンッという音が鳴る。
つづいて、静かな足音が近づいてくる。
いるまはすぐにらんをかばい、手にした拳銃を握りしめる。
🎼📢「物音、三つ。ドアの正面、裏口、……窓側にも一人いる」
🎼🌸「え……」
🎼📢「俺の後ろから、絶対に動くな」
銃声。
硝煙。
血の匂い。
まるで映画のように非現実的なはずなのに、らんの目は確かにそれを捉えていた。
ほんの数分だった。
しかし、いるまが撃ったその一発で、男は即死していた。
🎼📢「……らん、大丈夫か」
🎼🌸「……うん……」
らんはうつむいたまま、答えた。
🎼🌸「……いまの……殺したの?」
短い問いに、いるまはすぐには返せなかった。
🎼📢「……ああ」
🎼📢「俺は、人を殺してきたよ。……正当防衛も、仕事でも、何度も」
その声は、驚くほど静かだった。
らんは、目を伏せる。
心の奥にあった、「怖さ」がゆっくりと顔を出す。
この人が、俺の知らないところで――“死”を背負ってきたのだと、改めて突きつけられた気がして。
🎼📢「……怖いか?」
🎼🌸「……ちょっと、わかんなくなった」
🎼📢「……」
🎼🌸「いるまが優しくしてくれたのは、嘘じゃないよね?」
🎼📢「当たり前だ。お前にだけは、どんな顔も偽ってない」
🎼🌸「……なら、俺は……」
らんは、震える声で言葉を継ぐ。
🎼🌸「俺は、信じるよ。
いるまが何してきた人でも……俺を、守ってくれる人だってことだけは」
🎼🌸「でも……怖くなくなったわけじゃない。
それでも、俺は……一緒にいたいって思った」
沈黙。
長く、重く、深い沈黙。
その静寂を破ったのは、いるまの腕だった。
らんを、強く抱き締めた。
🎼📢「……ありがとう」
🎼📢「お前にそう言ってもらえるなら、俺はもう、過去に負けねえ」
抱き寄せた身体は、小さく震えていた。
でも、らんの手はしっかりと、いるまの背中を掴んでいた。
🎼🌸「逃げないで。
俺、もう置いてかれるの、いやだから……」
🎼📢「置いてかねぇ。どこにも、絶対」
その夜、ふたりは一晩中、何もせずにただ抱きしめ合っていた。
熱も言葉も、すべての壁を超えて、初めて本当の意味で“ひとつ”になれた気がした。
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