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文化祭が終わった頃には、空はすっかり暗くなっていた。
後片付けも終わって、校舎にはほとんど人がいない。
「つかれた……」
柔太朗はぽつりと呟いて、廊下の窓にもたれかかる。
「一日中人いたもんね」
勇斗は隣に立って、柔太朗の顔を覗き込む。
「……なに」
「めっちゃ可愛かった」
「まだ言うの」
「だってほんとだし」
呆れたように目を逸らす柔太朗の耳は、少し赤い。
「……もういいから、帰ろ」
歩き出そうとした瞬間、手首を引かれる。
「はやちゃん?」
「約束」
「……なにが」
分かってるくせに、わざと聞く。
勇斗は少しだけ笑って、ぐっと距離を詰めた。
「続き」
昼間、校舎裏で言われた言葉。
逃げるタイミングはあったはずなのに、足は止まったまま。
「……ここ、廊下」
「人いない」
「来るかも」
「来ない」
即答。
そのまま、壁に追い込まれる。
昼間よりも静かで、逃げ場がない。
「柔太朗」
名前を呼ばれるだけで、心臓がうるさい。
「ちゃんと、こっち見て」
顎に手を添えられて、視線を戻される。
近い。近すぎる。
「……顔、赤い」
「はやちゃんのせい」
「うん、知ってる」
少しだけ笑って——
今度は、ゆっくり唇が重なる。
昼よりも優しくて、でも深い。
逃がさないみたいに、角度を変えられる。
「……ん……」
小さく漏れた声に、勇斗の指がぴくっと動く。
「今の、反則」
「なにが……」
「可愛すぎ」
またキスされる。
今度は短く、何度も。
触れて、離れて、また触れる。
じわじわ追い詰められる感覚。
「はやちゃん、もう……」
「やめない」
「……知ってる」
観念したみたいに、少しだけ目を閉じる。
それを見て、勇斗はさらに距離を詰めた。
「今日さ」
「……うん」
「ずっと思ってた」
耳元で、低く囁かれる。
「誰にも見せたくないって」
心臓が跳ねる。
「……見せてない」
「でも見られてた」
「それは——」
言い訳しかけた唇を、また塞がれる。
さっきより、少しだけ強引に。
「俺だけにして」
昼と同じ言葉。
でも今度は、もっと近くて、逃げられない。
「……はやちゃんだけだよ」
小さく返すと、ぴたりと動きが止まる。
「今の、ちゃんと聞いた」
「……もう言わない」
「録音したい」
「バカ」
笑いながらも、額が触れる距離のまま離れない。
「帰る?」
「……帰る」
「送る」
「いいって」
「よくない」
即答。
さっきと同じ。
でも今度は、柔太朗の方から少しだけ距離を詰める。
「……じゃあ、一緒に帰る」
その一言に、勇斗がほんの少しだけ驚いた顔をする。
「なにその顔」
「いや、普通に嬉しい」
「……うるさい」
でも手は、ちゃんと繋がれる。
今度は振りほどかない。
静かな夜の校舎を抜けて、二人で歩く。
文化祭は終わったのに、
距離だけは、まだ縮まり続けていた。
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コメント
7件

luvさんの作品本当に大好きです✨ 最高すぎます!
神すぎます✨🫶 luv様の作品見てからめっちゃ3080沼ってます😭 ほんと毎回すごい作品ありがとうございます!!