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12月25日。街が煌びやかなイルミネーションと、浮かれたカップルたちの熱気で包まれるクリスマス。築留工業の「絶対王」怜也は、絵美が所有する都内最高級ホテルのスイートルームのソファで、一人ふんぞり返っていました。目の前の特大モニターでは、お気に入りのアニメの「クリスマス回」が流れています。
「おい、心美。シャンパン。一番高いやつな。あと由奈、フォークで七面鳥を運べ。自分で動くのは疲れる」
「ええ、怜也。あなたの指先ひとつ汚させないわ」
「はい、あーんして。怜也、これ一切れでアンタのバイト何時間分だと思ってる? 幸せに噛み締めなさいよ」
ランキング1位の心美が給仕し、2位の由奈が口に運び、3位の茜が足元で熱心にマッサージを施し、そして絵美がその全てを資金的に支える。
怜也はこの「究極の搾取」を世界に見せつけてやりたくなりました。
「神」の投稿:クリぼっちへの死刑宣告
怜也は、心美に持たせた最高級スマホで、4人の美女たちを背景にした自撮りを始めました。
「いいか、お前ら。最高に『道具』として映えろよ。僕がどれだけ楽をして、お前らを使い倒してるか、世間の底辺どもに教えてやるんだ」
「「「はい、怜也(きゅん)様」」」
怜也がSNSにアップした投稿は、またたく間にネット上を炎上させ、そして絶望の底に突き落としました。
【投稿内容】
ユーザー名:@Reiya_King_01
「メリークリスマス。
世間の底辺ども、寒い中『クリぼっち』で震えてる気分はどう?
僕は見ての通り、ランキングトップの女たちを実労働させて、自分はアニメ見てシャンパン飲んでるだけ。
こいつら、僕のために今日だけで合計100万以上稼いで貢いできたよ。
『愛』なんて言ってるから、お前らは独りなんだ。
女は『機能』。男は『搾取者』。
これが世界の真理。格差って、残酷だよね(笑)」
添えられた画像には、無表情で怜也の足元に跪く茜、怜也の口元に肉を運ぶ由奈、そして背後で微笑む心美と絵美。その中心で、ダルそうにアニメを見ながら中指を立てる怜也の姿がありました。
阿鼻叫喚のネット空間
この投稿は、クリスマスを一人で過ごす「クリぼっち」の男子生徒や、必死に彼女を作ろうとして玉砕した一般層に、再起不能のダメージを与えました。
「……何だこれ。俺が1ヶ月の小遣い叩いて買ったケーキより、こいつが捨ててる残飯の方が高いのかよ……」
「女子ランキング1位から3位……。築留の女神たちが、なんであんなクズの足拭きマットになってるんだ……」
「長島……お前は、俺たちの希望だったはずなのに、いつからそんなバケモノに……!」
怜也は、スマホに次々と届く誹謗中傷と、それ以上に溢れる「嫉妬の悲鳴」を眺めながら、炭酸の抜けたシャンパンを一口飲みました。
「あはは、見てよこれ。みんな怒ってる。必死に僕を叩くことで、自分の惨めさから目を逸らしてるんだ。滑稽だな」
怜也は、茜の頭を足で軽く小突きました。
「茜、お前もSNSのアカウントあるんだろ? 返信しとけよ。『怜也きゅんの道具になれないあんたたちは、生きてる価値ないにゃん』ってさ」
「了解だよ、怜也きゅん。……あーし、怜也きゅんにそう言ってもらえるなら、ネット中を敵に回してもマジで盛れるんだけど。今すぐ投稿するね」
壊れた王の、空虚な聖夜
モニターの中のアニメヒロインたちは、真っ直ぐな瞳で「メリークリスマス、大好き!」と微笑んでいます。
対して、怜也の周りにいるリアルな女たちは、感情を去勢され、怜也というブラックホールに全てを捧げるだけの抜け殻。
「(……あー、最高だ。誰も僕を否定しない。誰も僕に努力を求めない。僕が呼吸するだけで、金と女と贅沢が降ってくる)」
怜也は、由奈の太ももに顔を埋め、次のアニメの再生ボタンを足の指で押しました。
SNSでは今もなお、怜也への呪詛と、その圧倒的な「勝者ぶり」に対する絶望が渦巻いています。
長島怜也。
かつて優しかった少年は、クリスマスという聖なる日に、世界中の孤独を嘲笑いながら、自ら作り上げた「地獄の楽園」の奥深くへと、さらに堕ちていくのでした。