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翌日の午前11時。2人は旬の運転する車に乗り込み、探偵事務所へ向かう為に車を走らせる。
「ちょっと予約の時間より早くない?確か15時だったよね?まだ4時間もあるの?」
助手席に座る梓はスマホで時間を確認しながら駿に尋ねる。
「今すぐ行くわけじゃないよ。まずは金森の家に行かなきゃな」
「私の家?なんで?」
「はぁ〜・・今朝説明したろ?お母さんを探す為に必要な物を取りに行く為だよ」
「ああ、そう言えば言ってたね」
「それに、しばらく俺の家に泊まるんなら着替えも必要だろ?」
今より2時間前の午前9時。駿は昨夜調べた探偵事務所に依頼の予約の電話を入れた。
ホームページには即日調査OKと記載されていたからだ。
思いの外予約は順調に進み、本日の午後15時の予約となった。
電話の際、駿は以下のものを用意するように伝えられた。
まず行方不明者の基本情報が分かるもの。
例えるなら氏名や生年月日、身長や体重と言った捜索に必要不可なものだ。
次に過去一年以内に撮影された顔写真だ。
数年前などの写真の場合、捜索が難航する場合があるそうだ。
あとは、メッセージやLIMEのやり取りの履歴や、よく立ち寄る場所をまとめた物などの用意も加えて伝えられた。
「それにしばらくウチに泊まるんなら、着替えも要るだろ?」
「えー、先生の服でいいよ?」
「バカ言ってんじゃないよ!」
駿は顔を赤くしながら、梓の頭を軽く叩く。
駿と梓は車を近所のコインパーキングに駐車し、梓の自宅アパートまで歩く。
そして、梓が暮らす部屋の前までやってきたが、鍵を開ける梓の手が止まる。
「どうしたんだ?」
「ごめん先生・・実は言ってなかった事があるんだよね」
梓は申し訳なさそうに駿を見つめる。
「え?もしかして鍵無くしたとか?」
「いや・・そうじゃなくて・・その・・電気がね・・止められてるんだよね」
梓の言葉に駿は目を見開いて驚く。
「はぁ!まじで!?」
駿の問いかけに黙ってうなずく。
「お前なぁ・・そうならそうと、なんで早くに相談しなかったんだよ!」
「ごめんなさい・・・」梓は申し訳なさそうに肩を落とす。
「いつからだ?いつから止められてるんだ?」
「よ、4日前から・・・」梓は小声で呟く。
梓の言葉に駿はため息をつく。
「まぁ、しょうがない。電気代は一応俺が建て替えとくから、とりあえずはスマホのライトを使おう」
「ありがとう・・先生・・・」
梓は駿に深々と頭を下げる。
探偵事務所への依頼を済ませた駿と梓は車を走らせる。
「探偵に依頼するのってあんなに高かったんだね・・」梓は申し訳なさそうに呟く。
2人が依頼した探偵事務所は、依頼料を日割りで計算しており、1日一律5万円だった。
駿は1週間の捜索で依頼した為、単純計算で依頼料は5万円の7倍の35万円だった。
また、追加で交通費などの請求もある場合もあると説明された。
「昨日俺の通帳見たろ?依頼料くらい余裕だって!そんな顔するなよ!」
駿は微笑みながら梓の頭を優しく撫でる。
「何で先生はそんなに優しくしてくれるの?」
「そりゃ、金森の事が好きだからかな?なんてな」
駿は冗談まじりに呟きながら梓の方を見る。
しかし梓は頬を膨らませて駿を睨んでいた。
「あ・・ごめん・・今のは金森を元気付けようって冗談で・・」
駿は梓をなだめるように弁解する。
「もう叫ぶから!私の先生は生徒の心を弄ぶ悪徳教師って叫んでやるー!」
梓は車の窓を開ける。
「だぁぁぁ!悪かったって!ごめんって!」
しかし梓はそんな駿など気にも止めず
_人人人人人人人人_
> 私の先生はぁぁ!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
と大声で叫ぶ。
「悪かった!謝るから!ごめんって!」
駿の言葉に観念したのか、梓窓を閉めて駿の顔をじっと見つめ「冗談でも言って良い事と悪い事があるでしょ!?」と駿を睨みつける。
「そうだよな・・冗談でもこんな事言うもんじゃないよな・・ごめん」駿は梓に深々と頭を下げる。
「まぁ、なんか美味しい物だられさせてくれたら、許してあげない事もないけど?」
「おお!食べよ食べよ!美味しい物!何が食べたい?」
駿が問いかけると「きゃはは❤︎」梓ははしゃいだように笑う。
「ん?俺、なんか変な事言ったっけ?」
「今の先生の言葉・・私たち夫婦みたいだね❤︎」
「な、なに言ってんだよ・・ただの質問だろ?何言ってんだよ」駿は顔を赤くして動揺する。
「ねぇあなた❤︎晩ご飯何にしようかしら❤︎」
梓はからかうように駿に抱きつく。
「バ、バカ!運転中はやめろってば!」
駿は梓に抱きつかれた事でハンドル操作がグラつき、電柱にぶつかりそうになる。
しかし、すんでのところで持ち直し自損事故を回避する。
「あ、ごめん・・・」
「これでおあいこでいい?」駿が小声で呟くと
梓は「それとこれとは別」と言い放つ。
「ですよね・・・」駿はガックリと肩を落とす。
それからしばらく車を走らせる駿と梓。
「でもさ、本当に今日の晩ご飯どうすんの?」
「それだよな・・・」駿は頭を悩ませる。
「どっかに行く・・訳にもいかないよね」
「だな・・たまたま行った店に、偶然保護者が来てましたとかなったら大問題だしな」
「でも家で食べるにしても、どっかで材料買わなきゃじゃん?何もないって言ってたよね?どうすんの?」
梓の問いかけに駿は悩みながら「やっぱデリバリーかなぁ」と応える。
「あ!そっか!その手があったね!」
梓は目から鱗と言った様子で手を叩く。
「金森の足元のカバンに俺のスマホ入ってるから、好きなの注文しろ よ! 宅配館のアプリがあるから!」
駿は梓の足元を指差す。
「わかった!何でもいいの?」梓は駿のスマホを操作しながら駿に尋ねる。
「ああ!金森に任せるよ!」
「わかった!なら、届いてからのお楽しみって事で!」
「ああ!期待しとくよ!」
梓は駿のスマホを操作し、宅配館のアプリを立ち上げると、2人分の食事を注文する。
一方その頃、霞学園高校で駿と共に教師として働く雛形つかさは、2人の友人に連れられ繁華街に来ていた。
「ねぇ?ふたりとも・・本当に合コン行かなきゃダメ?」つかさは友人にうんざりした様子で語りかける。
「何言ってんのよ!アンタが彼氏いないって言うから今日の合コンセッティングしたのよ?ねぇ?」
「そうそう!言わばつかさは今日のメインなんだから!居なきゃ意味ないっしょ?」
2人の友人は半ば強引につかさの手を引っ張り、まるで強制連行と言わんばかりに、つかさを合コン会場となっているレストランに連れて行こうとする。
「だから!いつも言ってるじゃん!仮に彼氏ができたとしても、デートとかしてる暇ないんだってば!」
「いつも思うけどさ、教師ってそんなに時間ない訳?」
「そうよ!今日はたまたま業務が少なかったから土曜に休めたけど、普段だったら休み返上なんて日常茶飯事なんだから!」
「うわぁ〜ブラック〜」友人は教職の深刻な人手不足を実感したかのように引き攣った表情をする。
「なら教師同士で付き合ったら?」
「それが許されるなら苦労しないわよ」
「許されるならって、許されないの?」
友人は驚いたように目を見開く。
「保護者から苦情が入ってくる場合があるの」
「教師が恋愛にうつつを抜かすな的な?」
「そう!そんな感じ」つかさはうんざりした様子でうなずく。
「でもさ?好きになっちゃったんなら仕方なくない?」
「確かに理解がある保護者も居るわよ?けど一部そう言う苦情を入れてくる保護者が居ると、学校側は迷惑がるのよ」とつかさは言い
「先輩から聞いた話だと、妊娠した先生は辞職まで追い込まれたらしいわよ?」
「うげぇ〜・・まじで?映画みたい!」
「だから恋愛なんて」
つかさが喋っている途中に
_人人人人人人人人_
> 私の先生はぁぁ!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
通り過ぎる車から女の子の叫び声がきこえてくる。
「うっさいわねー」「ほんとそれ!」
友人2人はその車に敵意を剥き出すが、つかさは違った。
「あれって・・金森さん?それにあの車にあのナンバーって・・まさか!!!」
つかさにはその通り過ぎた車に見覚えがあった。
「あのナンバーは確か・・皆川先生の?」