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夕方。賑やかな笑い声は遠く、もうこの道に、二人しかいなかった。
「、、、今日は楽しかったな」
タマモクロスがぽつりと呟く。制服の袖に花びらが、乗っていた。
オグリキャップは隣を歩きながら、ちらりとタマモを見る。
「うん。さくらも綺麗だった。、、、でも」
「でも?」
「君が楽しそうにしてるののを見られたことが、1番嬉しかった」
また、その言葉だ。
まっすぐで、優しいくて、ずるいくらいに真剣な目で、そんなことを言う。
タマモは言葉に詰り、少しだけ視線を逸らした。
「、、、ほんま、油断ならへんな」
「え?」
「、、、うち、オグリといると、ドキドキすることばっかりや」
ふいに、風が吹いた。落ちてきた花びらが、ふたりの間をふわふわと落ちる。
その一瞬の空白に、タマモが小さくつぶやいた。
「なあ、オグリ。もうちょっとだけ、今日のこと、、、覚えてたい」
それはきっと、オグリも同じ気持ちだった。
だからふたりは、何も言わずに歩き出す。夕焼けの小道、肩がふれそうな距離で。
手はつながない。でも―
すぐそばに、お互いの温度を感じていた。
言葉にならないこの時間が、「好き」の種を、少しずつ育てていた。