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「やっべ…次俺じゃぁん、」
先程毒を浴びせていた紫色が、額に汗を浮かべながら言う。
その綺麗な瞳をモニターへと向けると、同接数は2万を優に超えていた。
思わず「ゲッ」と声に出すも早く、隣りにいた赤色がモニターを覗き
「うわ、同接2万超えだ、w」
と苦笑いをする。
他のメンバーは他人事のように「ファイトー」や「がんばれー」なんて心にも無い応援を浴びせるばかり。
「言っとくけど、君等のときにはもっと増えてるかもしんないからね?」
黄色からマイクを預けられ、溜息が入らないよう顔を背けてから再度前を向く彼。
口を近づける。
「…不服ですが、二番手コンタミが話します、w」
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暑い暑い夏の夕暮れ。
今にも壊れそうな扇風機を右側に、団地間の畳僅か6帖分くらいの部屋の窓鴨居に腰掛けながら本を読んでいる1人の青年。
外はジリジリと照り、天気予報では40度を超えると言っていた。
別れを告げる小学生、日傘をさしながら足を早める女性、電話口になにか口論をしているのか声を荒げる男性。
青年の目には、通行人の”普通”が出来ないままでいたのだ。
今日もまた、部屋の中で1人の生活。
パタパタと足音を立て、部屋に入る影が1つ。
青年の元には決まって夕暮れ時に来る人物がいた。
「…遅くなった」
息を荒げながら青年の前に座る帽子を被った少年。
その頭には髪の毛がなく、彼もまた”普通”とは程遠い生活を送っている人物の1人。
ぱたりと本を閉じ、少年のそばに座る彼。
その喉には人工呼吸器が植わっていた。
「…今日ね、余命宣告されたの」
”余命宣告”…その言葉を、青年は本で読んだことがあった。
青年の頬に1つの雫が伝う。
「でも、それと同時に治す手段も試してみないかって言われたんだ」
青年は首を傾げる。
というのも、彼が患うモノはそこらの医療機関では治せないと医師が諦めてしまう程のものだと前々から彼自身に聞かされていたのだ。
なのに■に際になって急に治るだなんて都合の良すぎる話だと、怪しいと感じた。
「そこは幾つもの末期の癌を治した事例があるらしいんだ。もしかしたら、君の喉も治して貰えるかもしれないんだ、…だから」
冷たい手が、青年の手を握る。
「良ければ、一緒にいかない…?」
その瞬間、青年は理解した。
彼は分かったうえで、怖いうえで、自分を案じて提案してくれているのだと。
青年はゆっくりと頷く。
「…ごめんね、」
少年は悲しそうな顔をした。
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思った通り、少年と共に連れて行かれた場所は地下施設だった。
装飾のない真っ白な廊下に漂う薬品の匂い。
目の前を歩く人もまた、自分たちを陥れたうちの1人なのだろうと思うと、ここに連れられた時点で逃げ場がないことを実感させられた。
どれくらい階段を下ったか、分からない。
廊下も先程のライトで照らされた場所とは違い、薄暗く見辛い。
「君はあっち」
白衣の男性が指を指した方向には、もう1人、白衣姿の男性が立っていた。
暗闇にいるせいか、掛けている眼鏡が気味悪く光っている。
「…じゃあね、」
暗闇に消えそうになる手を掴もうと手を伸ばす。
けれど、薄くなる期待に縋ろうとする彼の手は、すぐ暗闇に消えてしまった。
「君はこっちね」
肩を掴まれ、また違う部屋へと案内される。
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どれくらい時間が経っただろうか。
「”No.939”、時間だ」
「…」
この場所から出たい。
「No.939!何をしている!」
こんなところから、一刻も早く。
気がつけば、辺りは炎の海だった。
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紫色が言い終わると、上手いのか聞いていた全員は体が力んだ状態で固まっている。
数秒後には解けたのか、体の伸びをする黄色と緑色。
赤色がおずおずと手を挙げると「どうぞ」と、先程とは違う気の抜けた声で当てた。
「案内されたのって地下なんだよね?脱出する際に煙とか吸わないの?」
いやそっちかい、とツッコミを入れそうになった黄色。
仕草だけを見せる彼に、横にいた緑色がクスクスと笑っている。
「その時にはもう体弄り回されてたからね。毒、電気、熱…他にも耐えられるよ」
「チーターで草」
思わず出てしまった一言に、運営全員の視線が青色に集まる。
あれ、俺なんかやっちゃいました?という顔で、また大きなあくびを見せる彼。
黄色が「はい!」と勢いよく挙手をすれば「どうぞ!」と勢いよく当てる紫色。
「らっだぁが出てこんだけど、どういう経緯で運営になったんすかぁ?」
彼等運営はどこかしらでらっだぁ…青色と出会っているのだ。
この運営国も、4人は記憶を持っており、青色1人が初対面だった。
しかし、不思議なことに紫色の話には一切彼が出てこない。
「あぁ、さっきの話の続きになるんだけどね」
思い出したように話し始める彼。
「近くにあった城下町で、一番初めに案内してくれた研究員に会ったんだけどさ…少年から聞いてた話、コイツが主犯なんじゃねぇかって思って■したんだよね」
サラッと怖いことを言う彼に、その場にいた全員、聞いているら民の肝が冷えた。
「そしたら後々知ったんだけど、それが”らっだぁ”って名前だったのと、僕らを逃がそうとした結果、あの研究所から追い出されて職を失ったらしくてさぁ」
先程聞いていた研究員への同情が止まらなくなる彼等一同。
「そこで息絶えさせちゃったから、マジごめんねって感じぃ〜」
テヘペロ☆と笑って舌を出す彼から距離を取る一同。
冗談では済まされんぞ、と顔を一段と強張らす黄色に「ごめんって、w」と流石に焦りを覚える紫色。
当の本人である青色は「1回コンちゃんに■されてるってことか」となにか分析しているようで何も考えていなさそうな仕草をしている。
「んじゃ次、誰を処刑しますか?」
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コメント
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最終的に少年がどうなったかは分からないけど研究施設の雰囲気を見る感じ悪い方向に行った気がする…、cnさんも割とフッ軽で良かったけど、1回rd■してる時点でヤバいのか…、そしてブレないチーターぶり