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#高校生
第63話 「西福岡の執念」
2022年7月。
夏の福岡大会準々決勝。
柳城高校―西福岡高校。
センバツ王者と強打の西福岡。
球場は満員に近かった。
試合開始。
しかし予想外の展開になる。
初回。
西福岡打線が塁を攻略した。
連打。
犠牲フライ。
柳城、先制を許す。
0対1。
スタンドがどよめく。
この夏。
柳城が先制を許したのは初めてだった。
ベンチ。
福間監督は腕を組んだまま。
表情は変わらない。
三回。
史陽がヒットで出塁。
盗塁成功。
続く佐伯のタイムリー。
1対1。
試合は振り出しに戻る。
しかし西福岡も粘る。
五回。
再び勝ち越し。
1対2。
柳城は苦しい展開となった。
それでも。
六回。
二死二塁。
打席には塁。
投手ながら打撃も良かった。
カキーン。
打球はセンター前へ。
同点。
2対2。
ベンチが沸く。
七回。
塁の投球が変わり始めた。
球威が増す。
ストレートが走る。
西福岡打線は前に飛ばせない。
八回終了。
2対2。
勝負は最終回へ。
九回表。
柳城の攻撃。
先頭打者が出塁。
送りバント。
一死二塁。
打席には史陽。
スタンドが静まる。
史陽は初球を見送る。
二球目。
鋭く振り抜いた。
打球は三遊間へ。
抜けた。
二塁走者が生還。
3対2。
柳城勝ち越し。
そして九回裏。
マウンドには塁。
西福岡も最後の力を振り絞る。
二死一、二塁。
一打逆転。
球場全体が息を飲む。
塁は帽子のつばを触る。
そして投げた。
渾身の一球。
空振り三振。
ゲームセット。
柳城高校3対2西福岡高校。
辛勝だった。
試合後。
西福岡ナインは泣いていた。
あと一歩だった。
柳城の選手たちもそれが分かっていた。
整列後。
史陽が振り返る。
西福岡の選手たちはまだグラウンドにいた。
負けてもなお。
甲子園を見つめていた。
その姿が胸に残った。
帰りのバス。
福間監督が口を開く。
「今日の相手は強かった」
選手たちが頷く。
「だから勝てたことに価値がある」
珍しく監督らしい褒め言葉だった。
次は準決勝。
相手は福岡屈指の名門。
博多学院高校。
春から何度も優勝候補に挙げられてきた強豪だった。
甲子園まであと二勝。
しかし。
柳城にとって本当の試練は、ここからだった。
第64話 終
コメント
1件
いやあ、熱かったですね……! 先制を許すという柳城にとって初めての展開、そこからの同点、勝ち越し、そして最後のピンチを塁が三振で締める。まさに「執念」というタイトル通りの、一歩も譲らない好ゲームでした。特に、負けた西福岡の選手たちがグラウンドに残って甲子園を見つめる描写が胸に刺さります。あの姿があったからこそ、福間監督の「勝てたことに価値がある」という言葉が重く響きました。次は博多学院か……本当の試練、楽しみです!