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決闘場の中央。モブクズと夏菜は向かい合い、互いを睨みつける。
夏菜の左の瞳は復讐の宿る炎の赤い瞳に変わり、前髪や横髪が赤く染まる。
博神青紫
「……はぁ……これより、モブクズ・クラウドと夏菜の決闘を執り行う。決闘形式は、魔法使用もそれ以外も何でもありの制限なし。勝敗は一方の気絶及び戦闘不能、または降参宣言によってのみ判定する」
決闘の立会人を務める博神先生が、決闘の口上を述べていく。
博神
「決闘者たちに問う。貴公らは、この決闘に何を賭ける」
夏菜
「瑞夏に謝ってもらうぞ、モブクズ」
「思い上がるなよ庶民ごときが……てめえは犬にしてやる。毎日俺の靴を舐めろっ!」
2人は激しく視線をぶつけ合う。一触即発の雰囲気の中、博神先生が言葉を続ける。
博神青紫
「決着は言葉ではなく、決闘でつけることだ。両者条件に合意し、決闘の結果に従うことを誓うか?」
夏菜
「誓います」
「ああ、誓ってやるよ」
博神青紫
「………では、2人とも位置に」
多くの生徒たちも見守る中、2人は反対方向に歩き出し、定められた決闘の開始位置に向かう。両者の開始位置は十分に離れており、数十歩以上の距離がある。
美音
「どどどどうしよう、本当に始まっちゃった……!」
氷流
「落ち着け、美音さん。こうなってしまっては、もう止めようがない。せめて、僕たちは夏菜を信じよう」
言葉ではそう言う氷流。だが彼の手は固く握り締められていて、血を流さんばかりだ。瑞夏もおどおどとした表情で菜乃葉の腕をギシィと握りしめている。
そんな2人の横で、莉愛は呟く。
莉愛
「ちょっと目を離した隙にこんなことになるとはね……でも、いい機会かも。貴方の本当の実力、しかと見せてもらうよ」
一方、他の大勢の生徒たちも、口々に応援の言葉を発している。
「庶民なんて捻り潰して下さい、モブクズ様!」
「やっちまえー、夏菜ー!」
モブクズを応援する特選クラスの声援も目立つが、それ以上に一般クラスの生徒たちの声援が多い。様々な観衆たちの思いを他所に、モブクズと夏菜はそれぞれの位置につく。モブクズは両手を前に突き出して構え、夏菜は自然体で立ったまま動きを止める。
博神青紫
「両者、準備はいいな?では_決闘開始」
博神青紫の合図とともに、モブクズは叫び、続けて朗々と詠唱を開始する。
「格の違いを見せてやるよ! 猛き炎輪・狂える獅子・_」
夏菜
「【爆弾ストラクタ】」
すかさず響く、静かな夏菜の詠唱。目にも止まらぬ速さで生成された爆弾が、正確無比にモブクズの顔面を目掛けて飛ぶ。
「_いいっ!? ひ、卑怯だぞ詠唱中に!」
モブクズは叫び、大げさに身を翻して爆弾を回避する。モブクズの後ろでは爆弾が爆発を起こし、小さなクレーターが地面にできる。
その間に夏菜はすたすたと歩き出し、モブクズとの距離を縮め始める。急ぐでもなく自然な調子で歩いてくる夏菜の様子に、モブクズは何か異様なものを感じ取った。
「くっ、来るな! 猛き炎輪・_」
夏菜
「【爆弾ストラクタ】」
「ひいっ!?」
再び迫り来る爆弾を、モブクズは必死に回避する。低級の爆発の塊が、今は震えるほどに怖い。回避する他ないが、これでは詠唱もままならない。
「くそっ、こうなれば……【炎弾ストラクタ】!」
モブクズはとっさに、【炎弾ストラクタ】を放つ選択をした。モブクズにとっては、こんな低俗な魔法を使うなど、貴族にあるまじき振る舞いだ。しかし、背に腹は代えられない。今はとにかく、夏菜に詠唱を中断されない魔法を放つ必要があった。
夏菜
「……どこを狙っている?」
夏菜は歩きながら、わずかに身を傾けるだけで炎弾を回避する。実際には、モブクズが狙いを外したわけではない。夏菜が最小の動きで回避してみせただけだ。
「くっ_【炎弾ストラクタ】、【炎弾ストラクタ】、【炎弾ストラクタ】!」
夏菜
「どうした、当てないのか?これがクラウド家の本気か?」
「ええい、ちょこまかと!」
もはやなり振り構わず、炎弾を連射するモブクズ。夏菜は最小の動きで回避を続けながら、そんなモブクズに着実に迫っていく。
「このままでは、ただ夏菜の接近を許すだけだ」_そう悟ったモブクズは、最後の賭けに出る。こうなれば、夏菜が避けきれない広範囲魔法を放つしかない。多少詠唱に時間はかかるが、夏菜の爆弾を避けながら詠唱を完成させる。もう、それしか道はない。
「うおおっ! 飛鱗の炉心・這いずる蛇・灼け_」
夏菜
「【爆弾ストラクタ】」
予想通り夏菜の爆弾は飛んできたものの、モブクズはなんとか身を逸らしてそれを避け、そのまま魔法を完成させる。
「【炎扇波バンファーラン】!」
モブクズの前方に突き出した手の先、扇状の炎が左右広い範囲に噴き出る。もう逃げ場はない。全てを飲み込むような大きな炎の波が、夏菜の身に迫る。
夏菜
「__【華壁ウォーレン】」
波に飲まれる寸前に響く、夏菜の詠唱。モブクズはほくそ笑んだ。無駄なことだ。花弁の壁の左右を回り込んだ炎が、奴を焼き尽くすだろう。そうじゃなくても、次の魔法で確実にとどめを_。
「モブクズ様、上です!」
「……え?」
モブクズは上空を見上げた。その視線の先には、空中で拳を振りかぶる夏菜の姿があった。夏菜はやや斜め前方に突き出すように生成した花弁の壁を駆け上がり、モブクズの上方に跳んでいた。
「や、やめ――!」
夏菜
「恐怖と痛み…よく覚えておくんだな!」
落下の勢いとともに、夏菜が拳を振り抜く。鈍い打撃音が響き、殴り飛ばされたモブクズの身体が地面に転がる。その回転が止まった時、モブクズはとっくに気絶していた。
博神青紫
「モブクズ・クラウドの意識消失を確認。よってこの決闘_勝者、夏菜」
博神青紫の宣告に続き、場内に割れんばかりの歓声が沸き起こった。
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【爆弾ストラクタ】
よく夏菜が使う魔法。
手榴弾のようだが、小回りがきき、掴みやすく、被害も最小なので夏菜はよく使う。
↓怒って姿が変わった夏菜ちゃん
コメント
3件
モブクズ乙ww 夏菜さんすげー!!モブクズよ!僕に謝れ!
モブクズw強く言って割には夏菜に敵わないんだ〜ふぅーんw