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    〜あらすじ〜


入院中の病室で、kamomeは脳腫瘍の影響で翔に強烈な暴言を吐き、翔が距離を置く。

病気のせいだと自分を誤魔化したい気持ちと、責任は自分にあるという葛藤の中、kamomeは泣きながら小さな声で必死に謝る。

翔はその想いを受け止め、二人は再び心を通わせる。揺れる日常の中で絆を確かめるkamomeの物語。




第九話 本編「暴走するブレイン」


 病室の朝。カーテンの隙間から柔らかい光が差し込む。規則的な点滴のビープ音と、遠くの廊下の靴音だけが静かに響いている。


 隣には翔が座っていた。いつもの優しい笑顔で俺を見つめ、少し体を傾けて手を伸ばしている。


「かもめん、大丈夫なんか?」


 その声を聞いた瞬間、胸の奥がぎゅっと締めつけられる。

 でも、脳の奥で何かが暴走していた。言葉が止められない。


「……話しかけんな」

「……気持ち悪いんだよ」


 ち…違う…そんなこと言いたいんじゃない。なんでこんな言葉が出るの?

やっぱり、翔ちゃんの表情が固まっていた。目が驚きと傷つきで大きく見開かれる。


 でも、言葉は止まらなかった。


「……お前、いつも偉そうにして、マジでウザいんだよ!」

「……なんで笑ってんの? 腹立つんだよ!」

「……俺がそばにいるだけで迷惑なんだろ!」

「……お前の声も、動きも、全部イライラするんだよ!」


 息が詰まる。目の前の翔は一歩後ずさり、ベッドの端に座ったまま距離を取った。

 手を伸ばせば届く距離なのに、届かない。

ごめん…本当にごめんなさい。


(……脳腫瘍の症状って先生が言ってたかも……でも、翔ちゃん……)


脳腫瘍に…親友…いや、相棒まで取られちゃうの?

もういやだよ。こんな言葉、言いたくなんてないのに。

 病気のせいで暴言を吐いてしまった自分。と、言い訳すれば少しは楽になるかもしれない。

 でも、翔ちゃんを傷つけたのは事実だ。どんなに脳が暴走したとしても、自分の責任だ。


 胸の奥が締めつけられる。息が浅くなる。涙が溢れそうになる。

 このまま沈黙を続ければ、きっと…もっと翔ちゃんを傷つける。

 でも、声を出せばまた怒鳴ってしまうだろう。


(……どうすればいいの…?……)


 目の奥を押さえ、震える肩を抱きしめるようにして、ゆっくりと小さな声で呟いた。


「……ご、ごめん……翔ちゃん……本当にごめん……」


 声はかすれ、震えている。

 でも、それしかできなかった。自分を責めながら、必死に伝える。


「………病気のせいなんかにしたくない…。でも翔ちゃんを傷つけたくない気持ちは本当なんだ……止められなかくて…ごめん……」


 涙が頬を伝い、肩が震える。翔はまだ距離を保ったまま。沈黙が胸をさらに締めつける。


 恐怖が心を押し潰す。でも、怒鳴った自分を病気のせいにしてはいけないことを、十分に分かっていた。

 翔ちゃんを傷つけてしまった事実は変わらない。自分のせいで、相棒を傷つけたのだ。


 胸の奥に冷たい痛みが広がる。体が小さく震え、涙が止まらない。

 手が震え、ベッドのシーツを握り締める。


「……翔ちゃん……お願い……帰ってきて……」


 声はかすれ、嗚咽が混じる。

 だけど、また怒鳴ってしまうのが怖くて、大声にはできない。

 小さな声で、泣きながら必死に謝るしかなかった。


 時間がゆっくりと流れる。翔は病室から出てしまった。

 しばらくドアが開く音も、廊下の足音もない。

 孤独と不安が、胸を締めつける。


(……このまま帰ってこなかったら……どうしよう……俺は翔ちゃんまで失ってしまう……)


 手で顔を覆い、嗚咽を押さえながら、何度も小さく声に出して謝る。

「……ご、ごめん……ごめん……」

「……俺が悪い……全部俺のせいだ……」


 涙で視界が滲む。手も足も震えて、体が小さく丸まる。

 だけど、翔ちゃんがきっと戻って来てくれることを信じて、声にならない声で謝り続ける。


 時間が経ち、遠くからドアが開く音。


「かもめん……」


 小さな声。震えているけれど、確かに翔ちゃんの声だ。

 俺は泣きながら顔を上げる。


 翔ちゃんがそっとベッドの端に座り、手を差し伸べる。

 その手に触れた瞬間、胸の奥の冷たさが少しだけ溶ける。


「……ふふっ…なんだお前……泣いてたんか……怒ってない……怒ってないよ。……ちゃんと伝わった。…大丈夫やよ。」


 小さな声でも、翔ちゃんは受け止めてくれた。

 失うかもしれない恐怖の中で、初めて希望を感じる。

 病気で暴言を吐く自分でも、翔ちゃんはそばにいてくれる。

— 翔ちゃん…本当にありがとう。


 肩に触れる手の温もりと、瞳に映る優しさ。

 涙を拭いながら、胸の奥に少しずつ安心が広がる。


 病室の静けさの中で、二人の距離はまだ完全ではないけれど、確かに心は通じ合った。

 泣きながら謝った想い。必死に伝えた恐怖。

 それが、失いかけた絆を取り戻す小さな光になった。


 今日も病気と不安を抱えながら、それでも前に進むための一歩を踏み出す。

 小さな声の謝罪が、二人の心を繋ぎ、揺れる日常に希望を灯す。




終わりーーーーぃ

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1/五億回の動きの向こうに。吐血しても笑う俺と翔

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